長期で、深い不景気が起きえるのではないか・・・

ロシアがウクライナに侵攻してから3カ月がたつ。ウクライナのゼレンスキー大統領は「勝利を得るには戦場で勝つしかないが、戦争を終えるには交渉を通じてしか実現できない」と語っている。更なる世界の結束を訴えるが、西側諸国は戦争の終え方について、できるだけ早く停戦を実現させ交渉を開始すべきだとする「和平追求派」とロシアには多大な代償を負わせるべきだとする「対ロシア強硬派」に二分しているという。

▼議論が分かれている要因の一つが領土問題になる。2月24日以降にロシアが制圧した地域はロシアの領土とする、侵攻開始時点でロシアが保有を主張していた領土だけを認める、14年のロシアが強引に併合した地域を国際社会が本来認めてきた国境線まで返還させる、を巡る議論が続く。そして戦争長期化に伴うコストとリスク増大、長期化で得られるメリット、欧州におけるロシアの今後の位置づけも議論となっているという。

▼先頃、ロシアから撤退した米国マクドナルド事業を引き継いだ新たなハンバーガーチェーン店が12日、ロシア語の「おいしい」と「それだけ」を組み合わせた「フクースナ・イ・トーチカ」ブランドで開店した。どこの国でもある新店開店の騒ぎであり、無性に腹立たしさを感じた。ロシア政府は自国から撤退する外資系企業の資産を国内企業が一時的に管理できる法案の成立に動いているともある。対ロシア制裁が思ったほど効果を上げていないのであろうか。経済活動を利用して他国に影響力を行使する「エコノミック・ステーツクラフト」は、どうも簡単でないようだ。複雑な経済の動きを単純な政治の意図に従わせることには無理があるはずだ。

▼日本でも3年ほど前になるが、「輸出管理に不適切な事案があったから」を口実に半導体材料の韓国向け輸出を制限したことがある。当時の政権は「元徴用工訴訟で対応を示さない韓国政府への事実上の対抗措置」との認識で、「半導体材料という500億円程度の輸出を規制して、15兆円規模の韓国半導体産業全体に打撃を与える制裁手段」との評価もあった。しかし、韓国の半導体産業が受けた被害はさほどではなく、半導体材料の輸出規制は失敗だった。

勿論、韓国問題とウクライナ問題は全く違う。ただ、自由貿易体制こそが日本の核心的利益であることは間違いない。世界経済にどういう影響を与えるかを考えるとき、通常の景気循環とは異なり、周期的に収斂するものではない。とても予見が難しく、量的緩和や金利政策だけでの解決は出来ないと思える。想像出来ないほどの長期な不景気が起きえるのではないか心配だ。経済安全保障を考えると、戦争を終える為の交渉を実現して欲しいし、「エコノミック・ステーツクラフト」以外の方法は存在しないのかと思う。

(2022・06・18)