今年の新入社員から「セブン-イレブンの主要な成功要因を教えて欲しい」と質問があった。勿論、スーパーマーケットに就職した業界人からである。取り敢えず、① 急速出店、② ドミナント戦略、③ 人口の都市への集中、④ 単身世帯の増加、⑤ 荒利の分配方式の確立 と返事をした。人出不足、商品値下げ・ロス、飽和による競争激化、海外戦略、IT活用などの大きな課題も生じていることを添えた。
▼コンビニエンスストア(CVS)業界だが、「外出自粛により、自宅近くの決まったCVSを利用するようになる傾向があり、それが一定割合、定着していること、またコロナ禍が主婦や若い世代など新しい層がCVSを利用し始めるきっかけになっていること」がわかったと、スマートフォンの位置情報データを有するunerry(ウネリ)社の「コロナ渦でCVSの利用者がどのように変化しているのか」を調査した結果が業界誌『Diamond Chain Store』に掲載されていた。特にCVS業界の新しい層に対する継続した施策、「店に行きたくなる理由(わけ)」を提供し続け、この新しい客層を取り込む契機にするに違いない。
▼「店に行きたくなる理由」を提供するため、新しい生活様式への対応が急激に進められている。たとえば、セブン-イレブンは青果や「ダイソー」の商品を、ファミリーマートは衣料品のPBシリーズの売場を拡大する。この5月からは処方薬を送料・手数料無料で、最短翌日には受け取れるサービスを、東京都内の約2400店で開始している。
また、ファミリーマートは、大型デジタルサイネージ「Family Mart Vision」を、全国の店舗へ設置したい考えのようだ。これまでのサイネージ導入店では、宣伝した商品の売上は平均で約2割、最高で約7割アップしたとあることから、多くのメーカー企業からの出稿希望を受けているとともに、加盟店オーナーからも設置を求める声が強いとしている。
▼“店舗のメディア化”については、コーネル大学の特別講義『食品小売業界に関するシリーズ』第2回目の中で、ダン・フッカー教授も話されていたが、欧米企業ではすでに潮流となっている。Walmartは、「Walmart Connect」を立ち上げ、個々の消費者に合ったデジタル広告サービスの展開まで事業領域を広げている。
ファミリーマートは、国内のCVS業界の中で先陣を切ったことになる。セブン-イレブンも一部店舗で、同様の実験を開始している。
日本の小売業界でも、欧米のように新たな収益モデルとして確立できるかの注目が集まっている。
(2022・06・21)