企業の実力が再び問われる新しいフェーズに入った・・・

業界誌の『ダイヤモンド・チェーンストア』誌は、毎年7月1日号の「決算ランキング」特集で、上場小売業(外食を除く)の営業収益ランキングを掲載している。今週末の発売になるので、やっと上場企業305社の決算結果が一覧でみることができる。株式会社 商業界が破産したので、株式会社アール・アイ・シーが『食品産業』『販売革新』誌を継続刊行しているが、やはり、情報量という点では限定的に思える。

▼ただ、足元の小売業を取巻く環境をみると、焦点は23年3・4月期の決算になってしまいそうだ。相次ぐ報道の通り、値上げ動向に対する対応力が焦点になる期になりそうだ。電力料金、エネルギー費の高止まりなどで実店舗はコスト増が懸念される。新型コロナウイルス感染症は収束の兆しを見せつつあるが、人流増加により感染が再拡大する不安も全て取り除かれた訳ではない。外国人観光客の受け入れが始まり、インバウンド需要の動向も注視される。これまで以上に事業環境を見通しするのが難しい。だからこそになろう、決算発表の業績指標を読み解き近未来の“勝ち組”企業を占うことが大事と思える。

▼今年度の小売業ランキングでの最大の変化は、セブン&アイ・ホールディングスが、イオンを抜いて営業収益ランキングのトップになったことだ。買収した米国のSpeedway社の業績加算の影響で大幅増収になった。2位がイオンになり、3~5位はファミリーマート、ローソン、ファーストリテイリングと変化はなかった。昨年7位のパン・パシフィック・インターナショナルホールディングスが家電量販店ヤマダホールディングスを抜いて6位に浮上した。7位がヤマダホールディングス、昨年9位のツルハホールディングスが、家電大手のビックカメラを抜いて8位に順位を上げている。また、10位にはホームファニシング最大手のニトリホールディングスが新たにランクイン。連結子会社化した島忠の業績が加算されたことにより、大幅増収を果たし、昨年16位から急浮上した。

▼前期とは一転してスーパーマーケット事業も苦戦し、首都圏でSM事業の中核をなすユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス、東海・中部エリアで店舗展開するマックスバリュ東海も減収・営業減益となった。コロナ特需の終焉と、アフターコロナの世界の到来を予感させる結果となり、本来のトレンドに戻る中で、個の企業実力が再び問われる段階(新しいフェーズ)に入ったことになる。

価格競争力や商品力の向上、売場づくり、デジタル対応といった従前の課題に対し、いかにきめ細かく対応できるかが再び問われることになったと言えるのだろう。

(2022・06・27)