「個店経営組織」は、脱チェーン理論・・・

昨日、米国ホームファニシングチェーン『ベッドバス&ビヨンド』の業績悪化は、過去の成功体験から脱却出来ず、旧態依然のチェーンストア理論にしがみついていたことにあるとしたが、チェーン理論に関する話題になると、(株)島田研究室の島田陽介氏の論に行きつく。勿論、これも成功体験から脱却していないと言われるかも知れない(笑)。

▼「個店経営塾」というタイトルで、『ダイヤモンド チェーンストア』誌で連載されているが、ヤオコーは、ここに載っている考え方を実践してきた。「チェーン理論」の基本は、「命令と服従」の徹底、「マーチャンダイザーとストア・マネジャー」の区別である。マーチャンダイザーの責任は、担当する品種品目の店舗ごとの品揃えを決定し、それを店舗に命令し実行させ、その結果である「荒利益高」で評価される。ストア・マネジャーの責任は、マーチャンダイザーの品揃え命令を忠実に果たしつつ、店舗ごとの荒利益高から店舗当たり作業コストを減じた「純利益高」で評価されることであった。つまり「売上は店舗責任ではない」という画期的な組織論だったのだ。

▼ただ、現実的には、これまでの「慣習」を捨てられずに、店舗の最大責任は「売上高」にある。ところが、慣習的にではなく理論的に、店舗の売上責任を店長に直接課した組織論が「個店経営組織」になるのだ。セブン-イレブン・ジャパンの個店経営は、チェーン組織論と異なり、慣習としてではなく店長に売上責任を課す組織論を採用した。新しい組織論として、店長に売上責任を課したことになる。

▼個店の要求や発注を踏まえて商品部がマーチャンダイジングし、個店に品種・品目を提案するが、最終的には個々の店舗の品揃え、在庫および陳列量の決定などを個々の店舗が実行する。これこそが、「個店経営」ということになる。こうすると「売れる・売れない」の責任は、店舗、すなわち個店に課せられることになる。多くのチェーンは、「マーチャンダイザー制度」を採用したとしながら店舗に売上責任を課してきた。しかし、セブン-イレブンは、品揃えの決定権、売上高・荒利益高、コストの削減などの責任を個店に委ねる組織にしたのだ。どんなに自信ある商品を開発、提案しても、店舗からの発注がなければムダに終わってしまうのだ。

近隣商圏住民が「カスタマー」となり、繰り返し来店したくなるように、その時々のベスト3000品目を、30坪という限定された面積をフル活用して品揃えすることがセブン-イレブンの基本となる。本部の商品部はその個店のその時々の要求に応えるタスクフォースでなければならない。個店の商品マネジメントによる予測と要求、そして本部商品部の提案への対応といった、その店舗独自の「マーチャンダイジング」力で競合店と戦っていることになる。

(2022・07・05)