流通ジャーナリスト 鈴木敏仁さんが『米国流通レポート』の中で次にように話していた。車社会の米国において、物価の上げ下げを感じる最大の機会が給油の時だという。今年の4月の半ばに、ガソリンスタンドでの支払いが100ドルを超えた時に、とうとう来たかと実感したという内容であった。鈴木敏仁さんは、米国流通業界を軸としたコンテンツ作成ビジ ネス、企業が実施する米国流通研修の企画およびコーディネートなどを行っており、新聞などでよく米国流通業界をレポートしている。
▼日本でも、原材料価格高騰などによる食品価格の上昇が鮮明になってきた。主要品目の6割を越えるアイテムで、1年前に比べ価格が上昇している。その結果、約半数のアイテムで販売額が減っている。値上げが消費者の買い控えや割安な商品へのシフトを招いていると思われる。賃金上昇の難しい状況での値上げは難しいものがある。
▼このような状況の中で、今年4月、アルディが、CEOの顔写真と署名付きで興味深いメッセージを発信した。それが次の内容である。
「お客さまの節約のために最善を尽くします。今のような時期にこの言葉に責任を持つと断言することをとても誇りに思います。世界で何が起ころうとも、アルディはいつもロー プライスリーダ—であり続けるでしょう。我々は買い物をいつもシンプルにしようと努力してきました。トリックやだましはありません。お客さまにとって大切なものにお金を使えるよう、本当の節約を提供しているだけです。ガソリンや電気、ガス料金で困ったら、毎週の出費の中で明るく輝く唯一の光としてアルディを頼りにしてください」
▼不確かな時期に経営者の名前で、顧客の生活まで寄り添ったメッセージ大切さと、戦略性には頭が下がる。経済が不安定化した時にディスカウントモデルは強く、パンデミック開始以来の好調は続いている。インフレが激しくなって一層のチャンスが到来すると見たのであろうか、まさに先手を打ったと思える。
アルディは、PB比率が95%近いので、NBメーカーからの値上げ圧力も受けにくいので自社でコストコントロールできる点が強みだ。DS 系小売企業の腕の見せどころになるのだろう。
(2022・07・07)