「足し算」でリストアップして「業態」に・・・

新型コロナウイルス感染を避けるため、堪えに堪えて集団行動・外出行動を控えてきたのだが、新規感染者数が一時的に沈静化したので、外食を始め、スポーツ、コンサート、祭事、各種会合、旅行観光や海外渡航、海外からの来航など・・一気に燃え上がるかに見えた。サッカーやラグビーや野球の大会では、観衆は席を連ねてびっしり並び大歓声を上げていた。だが、根絶したわけではないコロナは、急速な再感染の拡大に及んでいる。

▼(株)島田研究室の島田陽介氏から『7月の提言1』が届いた。これは、島田研究室から月に複数回、小売業を取巻く情勢を分析し、解決のヒントをメール配信しているものである。

この号では、「マイケル・カレン」のことを取り上げている。理由は、円安、エネルギーコスト高、材料費高騰、サプライチェーンの渋滞などのコスト高要因に加えて、コロナの再拡大による消費の沈滞、が大恐慌を超える事態を生むとの予測があるからという。

▼マイケル・カレンは、世界初のスーパーマーケット『キング・カレン』を開店した。この成功理由は、「安売り」にあったことは言うまでもない。問題は、それまでの「安売り」と異なった方法を摂ったことにある。当時の商業はすべて「業種」に分かれていた。マイケル・カレンはそれら「業種」の品揃えの中から、不況時においても、多くの家庭がどうしても買わなくては困るものは何と何かと、「足し算」でリストアップしていったのである。不況になれば、人は本当に必要なものしか買わない、いや買えないのだ。だが「業種店」の品揃えは、例えば「靴屋」だから「靴」を揃えるのであり、それがなくては日々の生活に困るから、「靴」を置いているのではない。マイケル・カレンは、いま本当に困っている人々の立場に立って、何から扱ったらいいか考えたのである。こうして生まれたのが、後に「業態」と呼ばれる「生活必需品」の品揃えだった。

▼しかも、ほとんどの客の求めることが、単にそれを手に入れればいいのではなく、それを「出来るだけ安く」手に入れることだった。「みんなが本当に欲しいもの」、みんなが買いに来るものは何かと考え、それを揃えて、安く売れば、薄利多売が成立する。客はさしあたり欲しいものを買うことが出来、カレンはそれによってビジネスを成立させることが出来る。こうして始まったのが「キング・カレン」だったという。

情勢変化に対して、「みんながやるから、自分もやる」「これまでやってきたから、これからもやる」・・・で続けようとしていないか。とすれば、どこかに日本のマイケル・カレンがいてもおかしくないはずで、そこでの買物が不都合であることを、本当の意味での「お客」の目ですべて見直して、これら「業態」の店にある商品の1つ1つについて、本当にいまお客が求めているものは何か、「足し算」してリストアップしているかも知れない。

(2022・07・13)