「米国流通業視察」の復活を願う・・・

かつての「米国流通業視察」は、流通業、チェーンづくりという、これまでになかった事業展開への、唯一の「お手本」であり「手がかり」だった。必ずしも忠実なコピーが行われたわけではなく、今から思うと違うことを実行してはいるものの、「学ぶもの」は多かった。ただ、この20年間の「米国流通業視察」の多くは、他社が実施しているから我が社もという行事のように行われていたように思える。

▼スーパーマーケット(SM)各社が、他社意識が強く、業界挙げて視察を実施したのだが、SMこそ米国のSMと異なる店舗・売場づくりになっているように思える。米国にはたくさんのSMフォーマットが存在する。

「米国流通業視察」を観光あるいは渡航体験と割り切るのは1つの考え方になるが、大切なのは、すぐに役に立つ事項を集める視察ではなく、「企業の構造と本質」を、冷静に分析する言わば「俯瞰的」視察することにある。それは、「チェーン」という「画一化」を論理でなく感覚で意識出来ることで、品揃えアイテム数、棚割、POPの書き方などをメモ、隠し撮りすることなどの「部分視察」という「競争対策」実施のための「視察」ではないはずだ。そして、それぞれのチェーンのユニークさや、どんなカスタマーを、なぜ、どのように創造しているのか。そのカスタマーを維持し、増加させようとしているかを理解することにある。

▼この事は「国内企業視察」でも出来るはずだという意見もあるが、これこそ競争対策のための「敵情」視察になってしまう。小売業界で「勉強熱心」と言うのは、「競争相手」を摸倣し追随することにある。私たちは、いつも「他店」を見て考えているように思える。企業の構造と本質は、競争関係を離れた、摸倣の対象にならない米国の店舗を視察することで客観視することが出来る。それは、「客層」という「存在」を捉えるマーケティング思考ではなく、「カスタマー」という「状態」を追求する企業の姿を視察して構造と本質を見抜きたいのだ。

▼コーネル大学訪問時に、必ず店舗見学をさせて頂くWegmans は、イトーヨーカドーの惣菜売場にヒントを得てビジネスモデルを構築したという。Wegmansにとってイトーヨーカドーは、同業でも競争相手でもなかった。イトーヨーカドー訪問を、「摸倣」や「他から謙虚に学ぶ」ためでなく、「自ら考えるヒント」にしていたのだ。自分で戦略課題を考えていたことになる。

コロナ禍で、約2年半米国視察が中止になっている。激変する米国小売業の姿を今こそ視察したいものだ。日本の近未来の姿を占う上で「企業の構造と本質」を「俯瞰的」視察する機会の復活を願うばかりだ。

(2022・07・15)