景気後退の可能性が・・・

小売業を取巻く経営環境の変化を考えてか、悲観的な発言をする人が増えている。確かに、今の国内外の経済状況を見ると、景気後退の可能性を想定せざるを得ないように感じる。しかも物価が上昇する中での景気後退であるので少々厄介なものになりそうだ。

▼世界情勢を見ると、米国では、インフレの中で雇用も需要も拡大傾向にある。コロナ禍からのリバウンドが強く働いているように見える。ただし、このリバウンドはいつまで続くものか不明だ。極大化するインフレの中、景気後退を懸念する声も多く、有力のチェーンストアにあっても客数減、売上減の企業が増えてきている。ヨーロッパは更に深刻だ。ロシア侵攻の影響もあり、エネルギー問題が解決出来ず、ヨーロッパ経済に深刻な影響を及ぼすことは予想できる。中国も同様で、ゼロコロナ対策では、経済活動が厳しい影響を受けた。その後の回復も思うようではなく、15日発表の4~6月期のGDPは、実質で前年同期比0.4%増えただけであった。22年度の成長率目標は「5.5%前後」としているのでこの達成は厳しいと思われる。中国の動きが世界経済にも影響を及ぼしかねない。

▼世界経済はコロナ禍の影響で大きな落ち込みを経験した。昨年、今年とそのリバウンドが続いて来ているので、足元の景気が後退しているわけではない。ただ、エネルギーや食料の価格は高騰を続けるはずだから、物価上昇の中での景気後退という状況になる。企業はどのような対応が出来るかを考える必要がある。景気が悪くても価格を下げることは非常に難しい。あらゆるコストが上昇しているからだ。むしろ、コストが上昇している中では、価格は引き上げざる必要さえ出てもくる。景気の拡大期には、値上げしても収益を維持することは不可能ではない。しかし、景気の後退が始まると値上げは売上減に繋がる危険があるはずだ。始まるであろう景気後退期には、値下げで凌ぐことも、安易な値上げも策も有効ではなさそうである。

▼小売業に求められるのは、価格を引き上げることを可能にする「商品開発」や「販売戦略」である。もちろん、決して簡単なことではない。

ただ、これま何十年もの間、デフレ体質から脱するために採る解決手法は、「商品の付加価値を高め、競合品との差別化を進め、販売手法の質を高める」ことであった。インフレの中での景気後退が進むとすれば、これまで言われてきた施策をどれだけ実現できるかにかかっている。

デフレの時代は終わり、企業の存続に関わる戦いが始まろうとしているのだ。

(2022・07・19)