フジテレビ系「月9」枠で、放送中の番組に『競争の番人』がある。原作は、新川帆立による小説。公正取引委員会(公取委)を舞台に、叩き上げの女性審査官とキャリア組の男性審査官のコンビが市場を支配する巨悪に挑むミステリーだ。小売企業のコンプライアンス室に席を置いたことがあるので、もちろん、立場は反対の立場になるのだが経験も含めて内容は興味深いものがある。
▼将来の姿を把握し、業界としての対応のシナリオを描く目的で『シナリオ2020』と題する近未来対策の提案をしたことがある。内容は、「消費者の質的・量的の変化」、「法令の新設・改廃」、「DX(Digital Transformation)への対応」が小売業界にとって極めて大事なことになるというものだった。特に、最近では「コンプライアンスが経営の足をすくう」ことが多くなってきている。このようなか、小売業のラストマイル配送に関わる労働環境改善に、労働基準監督署を始め関係省庁か連携して対応に乗り出したという。小売業は、ロジスティクスに関する面でも法令順守を担保する仕組みを整え、そのコス卜を計画に織り込む必要が出て来たのだ。
▼22年6月、アマゾンの宅配業務を請け負っている個人ドライバーが「アマゾン配達員組合」の結成を発表した。横須賀市の配送セン夕—で働く10人が、地域合同労組の東京ユニオンに参加し「東京ユニオン・アマゾン配達員組合横須賀支部」を設立したという。ドライバーたちは、デリバリープロバイダや2次下請けと業務委託契約を結んでいる個人事業主の軽貨物ドライバーになる。アマゾンの配達用アプリを通じて荷物数や配達先を指示され、昨年6月にAIが各配達貝の受け持つ荷物や配達先を決定する仕組みを導人した後は、仕事量が急増したという。業務委託契約であってもアプリなどを通じて指揮命令を受けているので、労基法上の労働者として扱わないことは「偽装請負」に当たると主張、アマゾンジャパンとその下請け業者に対し、労働契約の締結や長時間労働の是正などを求めている。
▼小売業のラストマイル配送は、軽トラックや軽バンを使って荷物を配達する軽貨物ドライバーたちによって支えられている面が多い。自動車は持ち込みで、燃料費、修理費、タイヤ•バッテリー代、加えて社会保障費も軽貨物ドライバー負担のケースも多いと聞く。
ラストマイル配送には集荷がない。営業活動も必要ない。置き配などの普及で届け先と対面する機会も減っている。競争条件は、サービス品質からコストにシフトしたのだ。結果、個人事業主の軽貨物ドライバーが短期間のうちに急速に広まったのだ。
アマゾンジャパンの「デリバリープロバイダ」を務める企業が今年1月に労働基準監督署から是正勧告を受けていたとの報告もある。
物流の2024年問題にあるように、過酷な現場労働に労働法のメスが入れられようともしている。問題が起きれば元請けの物流企業だけでなく、発注者の荷主も責任を問われるようになるという。ラストマイル戦略は大幅な修正を余儀なくされるようになるかも知れない。
(2022・08・04)
