『日経 XTREND(クロストレンド)』という雑誌がある。新市場を創る人のデジタル戦略メディアをコンセプトとして2018年4月に創刊した雑誌だ。デジタル記事として月に200本以上を配信している。デジタル化に関する最近のトレンドがマーケティング、商品開発、事業戦略をどう変えるのか、消費者はどう変わるのかの情報を発信するものだ。
▼この雑誌のテーマは、「マーケット」「ヒット商品」「新ビジネス」「小売・EC」「テクノロジー」など5つの分野になるのだが、22年7月19日の記事に「Amazon Japanがネットスーパーで攻勢をかけている」が掲載されていた。生食文化が強い日本市場に合わせるため、在庫管理システムなどをローカライズ化。その仕組みを本国(米国)側も導入するなど、日本法人がアマゾンのネットスーパー全体を牽引するとある。
▼Amazonのネットスーパーは2つのサービスがある。1つは、既存のネットスーパーと提携し、ECサイト「Amazon.co.jp」上に各スーパーのストアを設ける出店型で、代表例はライフコーポレーション、19年9月から取り組みを開始した。バローは、21年6月にストアをオープンした。直近では、22年3月に成城石井が出店企業に加わっている。この既存スーパーとの提携を強化する目的は、「商品の充実」と「サービスの全国展開」だ。生鮮食品を全国津々浦々まで届けられる体制を築くのには時間がかかる。また、食文化は地場とのつながりが強く、地域ごとに嗜好性が表れやすいので、既存のスーパー業者との提携を拡大して、店舗を拠点として全国に事業を展開することを狙っているという。
そして、もう1つのネットスーパーが、直営の「Amazon Fresh(アマゾンフレッシュ)」になる。現在、東京都18区2市と神奈川県と千葉県の一部地域を対象エリアとして展開している。
▼このアマゾンフレッシュだが、データを活用した需要予測に基づく商品の発注、在庫管理、配送といったオペレーションに関わるシステムはアマゾンならではの高度な技術が用いられているが、生鮮食品の鮮度管理などのステムは、市場に合わせてカスタマイズし、より高度化している。例えば、日本の食卓は生食の文化が根強く消費期限が短い食品が多い。そこで、米国で採用されていた日数単位の在庫管理システムを時間単位での管理が可能な機能に拡張したとある。物流拠点では6つの温度に分けて在庫管理し、配送時にも常温・保冷・冷凍の温度管理をしている。
一方、新規顧客開拓や継続購入を促す施策はダイレクトメールに注力しているとのこと。一度ネットスーパーを利用したことがある顧客にも、過去の購入履歴、利用頻度などで細かくセグメントを設定し、顧客一人ひとりに向けてパーソナライズした手紙を出しているという。意外なほどにアナログだ。
Amazonでもデジタルだけでスーパーを完結することは不可能なのだ。高度なシステムと、生活に密着した業態だからこそ重要になるアナログでの顧客接点構築という2つが融合することで成りたつのがネットスーパーということか。
(2022・08・08)