コーネル大学RMPジャパンに毎期、出講頂いている大久保恒夫(株)西友社長兼CEOのインタビュー記事が掲載されていたのでポイントを報告したい。大久保先生は、21年3月に西友の社長兼CEOに就任し、新しい西友としてのミッションづくりと組織改革を進め、営業力強化、販売力強化に努めてきた。業界誌、セミナーとお話になられる機会が多く、既に見たり、聞いたりしている方も多いと思うがポイントを整理しておきたい。
▼コロナ3年目の今、考えられないほど利益が出ている。お客さまニーズへの対応、ローコストオペレーション体質が整ってきたことで基礎体力が上がって来たからだ。コロナ特需のこの時が改革のチャンスだと思い取組んできた。業界全体を見ると、多くの企業がディスカウント政策に戻っているが、安売りすれば減益になるのは自明だ。西友はエブリデー・ローコストとエブリデー・ロープライスを標榜しているが、無駄な安売り合戦からは脱却しようとしている。今後、これらの取り組みの違いで企業間格差は拡がっていくとみている。
▼大事なことは商品開発による商品力強化と現場での販売力強化になる。仕入れ原価が上がるなかで、営業利益を確保するには、商品開発力を強化して荒利益率を高め、人件費を中心に経費率をコントロールすることが必要になる。西友では「みなさまのお墨付き」、「きほんのき」のPB商品の強化であり、単品大量販売による仕入れの効率化になる。そして生産性を上げ、人件費率を上げないことも重要な課題となる。
販売力については、デジタルマーケティングが重要になっている。単なるディスカウントやチラシ販促の時代ではもうない。従来は不特定多数への品揃えであったし、チラシのプロモーションだった。どの商品が買われたかといった情報しか取れないという商売だったのがデジタル化によって劇的に変わるのだ。
▼購買データを見れば、どんな属性の人がいつ、何を購入しているのかがわかる。売れるものがわかってくると品揃えが変わってくる。不特定多数を相手にしていた小売業から脱皮するためにも、データ活用はこれからの小売業の生命線と言える。小売業は顧客数の多さ、コミュニケーションの頻度の高さが強みなので、そこから得られる膨大なデータは小売業の資産になる。そのデータを資産として活用する「タッチポイント業」になることを目指したいと考えている。
基本の徹底は小売業にとってどんな時でも重要な課題になる。小売業の基本は店舗にあるので、挨拶・接客、クレンリネス、品質・鮮度は常に最重要課題だ。コロナ禍で基本の徹底が弱体化している小売業が多いと感じてる。
最後は、大久保先生の持論である「基本の徹底」で締めくくってあった。
(2022・08・20)