リテールメディア化は、APIを活用し効果的に・・・

コロナ禍で小売業界では、販促事業のみならず顧客とのコミュニケーションのあり方が大きく変化している。そうしたなか、「LINE」が、自社のAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)提供による、小売業界のDX支援を加速させている。APIとは、組織や個人で持っている「データ」「アルゴリズム」「サービス」を、外部の他のプログラムから呼び出して利用できるように、手順やデータ形式などを定めた規約。利用者は、ソフトウェアサービスの提供において、すべての機能を自社で開発する必要がなくなるものだ。生活に欠かせないツール「LINE」などを活用することで、小売業の可能性が広がるという。

▼小売業各社が「リテールメディア化」を図る場合、2つの方向性がある。1つは購買データをメーカーなどに販売するケース。もう1つは、タッチポイントを増やし、顧客情報の解像度を上げ、商品・サービスをブラッシュアップするというケースだ。後者の実現例として、「LINE」の公式アカウントやミニアプリを利用することで、さまざまなサービスを手軽に提供できるようになるという。キャンペーン案内やクーポンの配布という情報配信や、セルフレジを「LINE」のAPI経由でスマホレジによる決済が実現可能になっている。

▼小売業界で自社アプリの開発に取り組む企業が増えているが、アプリのダウンロード数が伸び悩んでいる企業は多い。多くの生活者は、普段使わないアプリをスマホに入れたくないと考えていることがあり、ロイヤルカスタマーだからといって、必ずしも専用アプリを利用したいかと思ってはいないらしい。対して「LINE」は、国内で月間9200万人が利用しているツールで、使い慣れている人も多く、「友だち」登録すればいいだけだ。しかも、LINEの「プッシュ通知」は、開封率が高いという。

活用例では、東急ストアでは、専用アプリの会員数は7年間で9万人に留まっていたのに対し、LINE公式アカウント導入後の1年で20万人を超えたという。さらに、「TOKYU POINT CARD on LINE」は、連携後3倍となり34万人超となっている。

▼「LINE」を入口にすることで、リアル店舗とオンラインの連携で、新しいサービスの可能性、新しい顧客体験が広がる。レジカートと「LINE」を連携することで、レジカートの利用者と、買物中から帰宅後、次回来店時まで繋がることができ、One to Oneの関係性を築きやすくなるはずだ。勿論、これは「LINE」に限った事ではない。

顧客へのアプローチは、不特定多数を対象としたリアル店舗のものに比べ、デジタルを中心としたOne to Oneの関係構築がし易いはずだ。顧客ごとのニーズに応じて、品揃えやサービスを準備でき、安定したサービス提供にもつながると考えられる。

今後、店舗のデジタルマーケティングも、One to Oneが主流になるはず。その為の準備に取り掛かる必要がある。

(2022・08・21)