コンビニ業界の伸び鈍化、商品宅配に力を・・・

「Wolt(ウォルト)」を展開するウォルトジャパンは7月、ネットスーパー事業から撤退した。21年12月から、ウォルトマーケットジャパンが「ダークストア」を北海道と広島県で8店運営していたもので、約半年での撤退になる。ウォルトは2014年にフィンランドで創業したフードデリバリーサービス業者で、最近では食品や日用品などの配送も手掛けている。ネットスーパー事業は、既存の小売業者との提携と自社でのWolt Market事業の2つの軸で展開してきた。

▼撤退の理由は、日本国内では高い需要は見込みにくいと判断したようだ。今後は小売店の商品を配送するビジネスに注力するとある。現在は、米食品宅配大手「ドアダッシュ」が、6月に買収したもので、日本での配達サービスは「ウォルト」に集約するとしている。しかも、提携しているスーパー、コンビニ、百貨店、ドラッグストアなどの売上げは非常に好調に推移しているという。

▼店頭の商品を宅配すると言えば、コンビニ業界では、この1年で2倍を超える約4200店舗がサービスを開始している。総店舗数の約1割程度がサービスを展開している。コンビニの商品宅配は、店頭にある弁当などを自宅や職場に配達するもので、外出が難しい高齢者や子育て世帯のニーズなどに対応してのものだ。

「セブンーイレブン」は、1年間で約3倍の約1200店舗に達した。宅配業務は、外部の物流会社に委託し、24年度中にほぼ全店規模となる約2万店に広げる計画だ。イトーヨーカ堂などとの共同配送の計画もある。

「ローソン」も、全国の都市部や住宅地を中心に1400店舗増やして約2900店舗とした。23年2月には約4000店に拡大する方針だ。店内調理の惣菜が人気を集めているという。宅配業務は「ウーバーイーツ」や「出前館」などの配達員が店舗から届ける仕組みになる。注目点は、商品宅配を活用すると商圏を約5キロメートルに拡大出来るとあることだ。普通、コンビニの商圏は半径約350メートルとされ、徒歩で約5分程度のものなので、飛躍的に商圏拡大が図れることになる。

「ファミリーマート」は、約50店で展開しており、導入効果を見極めて店舗拡大を検討するとある。「ミニストップ」と「ポプラ」は21年度から始めたばかりだ。

▼コンビニ各社が商品宅配に力を入れる背景には、市場全体の伸びが鈍化しているからだ。21年度の全店舗売上高は前年度比約2%増だ。ただ、19年度比では3.9%減にとどまり、総店舗数も0.1%増の5万7825店と伸び悩んでいる。平均日販を増やすためにも、商品宅配の重要性が増している。今年度の取り組みも「電子商取引(EC)の拡大」が多いようだ。将来的にはコンビニの半数近くが対応する見通しでもある。

(2022・08・22)