1日のニューヨーク外国為替市場で、円が対ドルで一時1998年8月以来24年ぶりに1ドル=140円台を付けた。米連邦準備理事会(FRB)が歴史的なペースで利上げを進めるなか、日米金利差拡大で今年の下落率は約18%となり、変動相場制移行後2番目に大きいという。円安は景気浮揚力と言われたこれまでと違い、企業収益の増加や日本経済の活性化につながりにくくなっている。日本の経済構造は変化しているのだ。
▼ただ、この為替市場は「円安」というより、「ドル高」と言える。主要通貨に対するドル指標が上昇しており、ユーロに対しても20年ぶりの高値圏にある。日本と違って金融引き締めに動くユーロに対してもドル高は進んでいる。このままでは、米国企業の輸出競争力が弱くなるように思える。日本の財務省も日銀も沈黙を貫いているが、物価上昇の一因ともなっているこの円安と向き合いながら、日本経済をどう活性化させようとしているのか知りたいところだ。
▼物価上昇と言えば総務省が8月19日に発表した7月の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で2.4%上昇した。2%以上の上昇となるのは4ヶ月連続となる。食料全体で4.4%、うち生鮮食品8.3%、生鮮食品を除く食料3.7%と高い伸びが続いている。帝国データバンクの調査結果によると、10月に値上げする食品は酒類や清涼飲料水、ハム・ソーセージなど加工食品を中心に6532品目あるという。原材料価格が高止まりしているうえ、エネルギー費の高騰や円安の影響が続いているのだ。
▼「賃上げなき物価上昇」と言われてきたが、日経新聞によると、基本給を一律引き上げるベースアップ(ベア)を今夏に実施する企業が相次いでいるという。背景にあるのは急速な物価高になるようだ。第一生命経済研究所によると22年度の家計負担(2人世帯以上)が年約10万円増と試算しており、優秀な人材のつなぎとめに賃金増が必要と判断する企業が多くなっているという。しかも、物価高対応のため賃上げ率も高く、一時金で支給するインフレ手当を出す企業もある。連合によると、22年春季労使交渉でベアと定期昇給(定昇)を合わせた平均賃上げ率は前年比0.29ポイント上昇の2.07%になったが、夏に賃上げを実施する主要企業はこの水準を大きく上回る。
賃上げ→消費増→企業収益拡大という好循環につながる事を期待したい。
(2022・09・03)
