昨日は、夏ベアについて触れた。早速、何件かのメールを頂いた。我々世代の思い出話が多かった。1971年に就職したのだが、小売業界の話になるが、当時の大学初任給は45,000円前後であった。ただ、半年もしないうちに給料は上がったのだ。当時はなんのことか理解することもなく増額したことを喜んだだけであった。こんなことが何回もあった。メールには、このベースアップ(ベア)の恩恵に関する件が多く、良き時代を懐かしんだ。
▼企業が基本給の水準を一律に引き上げることを「ベースアップ」(ベア)というが、日本経済が飛躍的に成長を遂げた時期、実質経済成長率が年平均で10%前後を記録した1955年頃から1973年頃までの高度経済成長期に根付いた制度で、物価上昇などで相対的に下がった賃金の回復が目的とされた。我々の世代は、この恩恵を受けたのである。社員の勤務年数などに応じて給与を増やす「定期昇給」とは異なるものだ。
▼基本給は業績が悪化したからと言って引き下げるのは難しい。しかも、基本給に連動して社会保険料や残業代なども増えるため、多くの企業はベア実施には慎重にならざるを得ない。デフレ状態が長く続いた日本では、ベアを実施せずとも定期昇給だけで実質賃金がプラスとなる感覚から企業経営者はベアに踏み切れなかったのだ。しかし、政府が賃上げを呼びかけもあり、ベアを含む賃金改善の機運は大手企業を中心に高まりつつある。この流れの中で、住友化学は7月に、4年ぶりとなる平均3000円のベアを実施した。日経新聞にはこの他にも大塚商会、AGC、ディスコ、鳥貴族HDなどの企業が実施したとある。インフレ手当もノジマ、サイボウズの例があった。
▼頂いたメールの中に「賃上げ→消費増→企業収益拡大という好循環につながると結んでいるが、その因果関係は腑に落ちない。しかも、ベアのようなやり方は、時代遅れ感がある。高度成長期はこのやり方でよかった。経済全体が縮小し、様々な技術面で海外企業に先行され、グローバル競争で苦戦する状況でするべきでない。競争力を高める施策とリンクしない単なるベアは企業の持続的成長につながらない。日本企業の課題は労働生産性の低さにあるのだから、付加価値を高め、労働生産性、競争力に直結する知識や技能の向上に賃金増をリンクさせるような施策をとるべきではないか」との意見もあった。
賃上げは継続性や安定性が重要な要素になる。人手不足の解決が見られない中にあって、小売業の給与の在り方も真剣に考える必要がありそうだ。
(2022・09・04)
