米国でのインフレだが、勢いが収まる気配がない。8月の消費者物価指数は想定を上回り前年同月比で8.3%の上昇となった。特に目を見張るのが食費で、卵の値段は一年で39.8%の上昇、バター24.6%、コーヒー17.6%、シリアル17.4%、ミルク17.0%、鶏肉16.6%、パン16.2%と様々な食品が値上がりしており、内食関連は13.5%の増加で人々の生活に大きな影響を与えている。
▼このような消費環境のなかで、Aldiは22日、売上高既存店昨年比が二桁の増加となったことを公表したとある。コーネル大学RMPジャパンの修了プログラムでイサカ市のコーネル大学キャンパスを訪問するとき、必ず店舗見学をさせて頂く企業のひとつだ。この企業38州に2,200店を展開する規模だが、決算数値を初めとする内部資料を公に明かさないことでも有名だ。今回も、売上高などの詳細は明かさなかったもののインフレの影響もあり新規客が100万人も増えたという。興味深いのはその多くが中・高所得者であることと異例となる発表があったのだ。
▼1,500アイテムと絞られた商品の9割はPBとなっており、同等のNB商品と比べて最大60%も安い。しかも、低価格を実現するため品質を落とすようなトレードオフは行っていない。訪問したときも「Twice as Nice Guarantee」と謳っており、返金だけでなく代替品も進呈するという100%満足度保証精度があった。第9期の皆さんと訪問したときは、店舗全面改装が実施された直後で、青果物の品揃えを20%も増やしながらも、新鮮さから5年間で70%も増加したという。
▼Aldiだが、ローコスト運営も徹底している。対面のデリ・精肉コーナーもなく、商品パックのスタッフも不要だ。商品陳列は、段ボール箱を開けて積むだけのopen carton displayを採用、PB商品のパッケージにはパーコードがマルチサイドにつけられ、レジ係りのオペレーション効率を上昇させるなど工夫されている。多くの店舗では午前9時~午後9時の12時間営業となっている。時短営業でも人件費を抑えていることになる。
Walmartでも、決算説明会でダグ・マクミランCEOは「米国内事業では中・高所得層が食品や消耗品などで節約を求めてWalmartに来店していた」と語っていたとある。Aldiと同じ現象が起きているのだ。第2四半期の決算ではWalmartUSの既存店ベースは予想を上回る6.5%の増加となっており、ジョン・レイニーCFO氏も「食品や市場シェアの増加分のうち、約4分の3が世帯年収10万ドル以上だった」とも語ったとある。
WalmartもAldiでも「トレードダウン」による客数増が起こっているのだ。
(2022・09・26)