「泊まれない旅館」が開業した。箱根で旅館4店舗・飲食店2店舗を展開する株式会社 金乃竹がそれで、マイクロツーリズム需要の高まりで拡がりつつある「デイユース」市場へ向けて、旅館でのデイユース体験を提供するもので話題になっている。コロナ渦の行動制限の影響もあるのだろう、緩和前と比べ4割近くが日帰り旅行への意欲が増したという。また、旅館のデイユースを利用したことがある・検討したいと思っている人は7割近い。「料理」、「露天風呂付き客室」がデイユース利用時に期待するもののようだ。
▼金乃竹のホームページを見ると、露店風呂付きお部屋に10時間滞在し、黒毛和牛しゃぶしゃぶ御膳の昼食付きで、34,100円(大人1名あたり/大人2名利用時)からとあった。かなり高額だが、予約が取りにくいという。この企業がと言うわけではないのだが、利用者の宿泊サービス業に求める内容が変化しただけでなく、人手不足でそうせざるを得ないというケースも出て来ているようだ。「満室です」との表現も、物理的な意味ばかりではなく、人手不足によるサービスレベルを維持出来ない場合もあるらしい。観光地の宿泊施設向け人材サービスを展開する企業の担当者は、「夏休みシーズンが終わっても宿泊施設の人手不足は続き、単価の低い素泊まりプランを増やす宿も出ている」とマスコミのインタビューに答えていた。
▼コロナ渦のもと経済活動が戻りつつあるが、非製造業を中心に企業の人手不足感が高まっている。飲食店も人手不足が営業面での足かせとなっているようで、家の近くのラーメン店「日高屋」も平日の営業時間を短縮している。個人経営の店舗ではあるが、ピザ店も今月から週休2日になってしまった。
帝国データバンクの調査(有効回答数約1万2000社)結果が日経新聞で報道されていた。これによると「人手不足」と回答した企業の割合は8月に正社員で49.3%、非正社員で29.1%。どちらもコロナ禍後最大となり、訪日外国人客の増加や東京五輪関連の建設工事などで人手不足感が強まっていた18年頃に迫る水準との事である。
▼総務省の労働力調査によると7月の飲食宿泊は19年7月比4%減の390万人、生活関連サービス・娯楽も同4%減っている。反面、情報通信は19%増の290万人と大きく増えている。コロナ禍の行動制限で外食や観光の需要が減退するなか、安定収入などを求めて情報産業に流れた結果なのだろう。
人手不足に伴いアルバイト時給は右肩上がりだ。リクルートによると三大都市圏(首都圏、東海、関西)の「販売・サービス系」は前年同月比2円高の1084円で高水準にあるという。原材料高が続くなかで、人手不足はより深刻化するとなると、スーパーマーケットも新しい課題を抱えることになりそうだ。
(2022・09・28)