日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)の現業判断DIを見ると、小売業では、大企業で3(変化幅▲4)、中堅企業▲4(同±0)、中小企業▲15(同1)であった。先行きはそれぞれ3、1、▲14という結果である。業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値。勿論、全小売業の調査であり、スーパーマーケット(SM)を代表しているわけではないが、歴史的な円安が進み、諸物価が高騰のなかで、多くのSM経営陣は、惣菜強化に生鮮食品の加工度(付加価値)アップ、PB商品の強化を訴えている。
▼イオン(株)も、「トップバリュ チルド惣菜シリーズ」を全面刷新し、先月末から順次展開しているとニュースリリースにあった。この惣菜シリーズは中食需要が高まるなか2年間で売上が1.3倍に伸びているという。なかでも特に人気の高い「プロのひと品」を「全面刷新」し、よりおいしさを追求した商品を展開していくとある。日本料理店「分とく山」の野崎博光総料理長、イタリア料理店「アクアパッツァ」の日髙良実オーナーシェフ、中華料理店「慈華」の田村亮介オーナーシェフなどミシュランの星付き有名料理店のシェフ監修の本格的なメニューを展開しており、「イオン」「イオンスタイル」など全国約3000店舗で取り扱うという。
▼加えて、イオンPB商品「トップバリュ」も開発コンセプトの見直しを開始しているようだ。これまでは、物価上昇基調のあるなかで、価格訴求の対象として注目を集めるケースが多かったが、「付加価値」「新価値創造」へのウェート変更を図っているとの報告があった。「くらしにソリューション、トップバリュ」をコンセプトとして「トップバリュは、お客さまのくらしにソリューションを提案し続ける『新価値創造ブランドです。』」を据える。具体的には、①ヘルス&ウエルネス、②こだわり、③サステナビリティを柱に、開発テーマを①体の健康(自身・家族)、②ストレスレス/簡便・時短、③こだわり/楽しさ・驚き、④地球環境・地域貢献に設定、これらに沿った商品開発を行っていくとある。
▼商品の持つ価値が、一目で読み取れるようパッケージデザインも一新する。品質の追求にも力を入れ、消費者モニター調査を再開し、①ブラインドテストによる試食で80%以上(70%から引き上げる)の評価、②味・価格・容量などを含めた評価でNB商品を上回る評価の両方をクリアしたものだけを発売する。更にお客から支持される品質を追求する方針だ。また、イオングループ従業員(全国57万人)からのトップバリュ商品に関する提案や要望、意見を受け付ける専用のコールセンターの活用もいっそう進めるとの説明だ。
このように「トップバリュ」に変化の兆しがあり、「スモールマス」への対応も強める動きだ。いよいよ、本質的な戦いを避けては通れない。
(2022・10・06)