久しぶりに農業経営者の前で、小売業の現状を90分×2コマで説明させて頂いた。若い経営者が体験する上での疑問点を率直にぶつけてくれるので、とても気持ちの良い時間であった。正解など存在するはずがない。過去の成功例、失敗例を踏まえて、自分自身で解答(案)を出し、トライ&エラーを繰り返すしかない。このエネルギーを継続出来た人が成長できる。
▼食品スーパーを取巻く環境は厳しいものがあることを再確認しながらの説明になった。6割の世帯が平均所得より低いという現実がある。国民生活基礎調査によると、21年(年間)の世帯所得金額の平均値は545万7千円、同中央値は423万円とある。所得金額階層別世帯数の相対度数分布でみると、平均所得金額以下の世帯が61.6%あるということになる。2000年に比べ、年間世帯所得が400万円以下の世帯は8%増え、400~800万円の世帯が1.6%減っているのだ。
▼1970年代から80年代にかけて、「国民生活に関する世論調査」で、生活の程度に関する設問に「中の上」「中の中」「中の下」と回答する人の割合が高く、70年代前半には、9割を超えるなど、「総中流社会」と呼ばれていたのだ。しかし、「格差社会」という言葉が定着したように、今の日本を総中流社会だと考える人はほとんどいない。日本社会を形容する言葉は大きく変わっているのだ。
▼広義的には何らかの二つの層の中間に位する社会層を総称した言葉に「ミドルクラス」という言葉がある。中流意識と所得との関係、厳密には区別する必要があるが、年間世帯所得の世帯構成の変化は、衰退するミドルクラスといも言える。ミドルクラスは、経済成長と民主主義の基礎となる存在で イノベーションや経済成長を生み出す原動力のはずだ。この層が減少するということは、生活全体に及ぼす影響も大きい。この層があればこそ、日本の小売業は飛躍的に伸びて来たのだから。
2023/09/08
