『Diamond Chain Store』誌(ダイヤモンド・リテイルメディア社)の、国内小売業売上高1000社のランキング特集だが、今年度も業態別の総売上高が最も落ち込んだのが百貨店になる。ランクインも昨年に比較して4社減になっている。総売上高は33.3%減になっているが、新収益認識基準を適用した影響であろう。日本百貨店協会公表の22年度の全国百貨店売上高は13.1%増となっている。
▼人流の回復や株価上昇による資産効果、インバウンド消費の復活も兆しを見せており、大手百貨店各社の業績は良いようだ。ただ、地方の中小百貨店は最終赤字の企業が目立つ。新収益認識基準の影響が一巡し、経済の正常化が進むと思われる次年度の動向が注視される。GMSも同様だ。13社の総額売上高は14.0%減少しているが、会計基準変更による面も多いはずだ。イオンリテールも23年2月期決算で3期ぶりの営業黒字化を果たしている。
▼ところで「収益認識基準」とは何かということになる。売上をどのように認識し、どのタイミングで財務諸表上に反映するかという会計基準のことで、これが新しくなったということだ。企業会計は、収益の認識には「現金主義」「発生主義」「実現主義」の考え方があり、従来の日本では「実現主義」の考え方が用いられていた。ただ、事業内容が多様で複雑になる中、収益認識が異なることになる実現主義だけでは、混乱を招く可能性が出て来たのだ。
▼実現主義には、より厳密な基準である「出荷基準」「引渡基準」「検収基準」の3つがあり、企業によって採用する基準が異なっていたのだ。そして、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が共同で、収益認識に関する包括的な会計基準を開発するという出来事もあった。そこで、日本の収益認識基準も、国際的な会計基準に合わせて統一することとなったものだ。移行期はこれらを前提に各社の数字を見たいものだ。
2023/09/13