食料生産基盤の弱体化に対応しなくては・・・

農業生産者の多くが複雑な思いで目にするTV番組が多い。食ビジネスに関わっているわれわれからしてもそうだ。料理や農産物を大盛にするなどして破格値で提供する飲食店や小売店を紹介する番組だ。また、大食いを競う番組のなんと多いことか。店の宣伝として良いのだろう。消費者にとっては良い情報なのだろう。ただ、まともな食生活を送れないでいる欠食児童のことだけでも、世界に数多く存在し、今後も解決への道が探れない状況のはずだ。

▼それだけではない。日本の「食」と「農」は様々なリスクに直面している。食料自給率(カロリーベース)が長期にわたって低迷し、22年度は38%と、主要国の中で極めて低い水準にある。農林水産省は30年度に45%まで高める目標を掲げてはいるが、実現のメドは立っていない。販売農家は20年までの20年間で半分以下に減ってしまった。農家の平均年齢は68歳で、廃業する人も後を絶たない。農地減少も歯止めはかかっていないのだ。

▼異常気象、自然災害による22年の被害総額は2401億円に達している。そして、特に深刻なのが、ウクライナ危機による国際相場の高騰で、肥料や飼料価格が上昇、その資材価格上昇分を販売価格に転嫁できずに農家の経営を圧迫している。この状態が続いたままでは、食料の安定供給に黄信号がともりかねない。しかも、世界の人口は、50年には97億人になると予想されている。国内で食料増産せず、輸入に依存し続けることはリスクと思える。

▼日本の食料生産基盤は弱体化している。食料インフラの崩壊を防ぐことは、喫緊の課題のはずだ。では、われわれ食品スーパーに出来ることはないのだろうか。農業危機は国民のリスクでもあることを念頭に、実情を把握して消費者に伝えることもひとつであろう。大都市一極集中が進む中で、生産者と消費者の距離をどう縮めるか大切なことだ。食と農の置かれた状況を知り、消費者に理解してもらうには、どんな方法があるかのアイデアを業界としても考え抜く必要がある。

2023/10/07