最低賃金は厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会が引き上げの目安を示し、都道府県ごとに労使の審議会で議論して決める。令和5年度の改定の目安は、Aランク(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪)が41円、Bランク(北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡)が40円、Cランク(青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)は39円が示されていた。
▼ここ数年、政権の意向を映し最低賃金の大幅な引き上げが続いている。生活保護者の方が高収入になるとの問題も生じていたが、今年は中央最低賃金審議会の目安を大きく上回る決定が目立った。22年度は、最大で目安を3円上乗せしただけだったが、今年は12県が5円以上の上乗せとなった。10月からの最低賃金時給は、東京都1113円、千葉県1026円で茨城県は953円。この差は行動範囲の広い若い働き手には都市に向かう理由になってしまう。
▼バイト時給の相場は、働く場所(都道府県)としての魅力を左右する。労働力調査(総務省)のによると、22年には雇用者の37%が非正規で働いているとある。最低賃金は、時給で働く非正規への影響を中心にセーフティーネットとしての位置づけであったが、それを超えてしまった。人手不足に悩む地方は1円の上げ幅を競わざるを得ない。結果、都道府県の審議会がまとめた答申額は、国の目安より高い引き上げとなってしまったのだ。
▼10月から最低賃金時間額は、全国加重平均で1,004円になる。賃上げの継続は企業が生産性を高め、収益力を上げることが前提なので、1円の賃上げを巡る競争は、企業の成長戦略の優劣を問う事になる。パート、アルバイトの採用時給は、経営体力を踏まえて対応する事になるが、人材の「奪い合い」が始まるだろう。その為、企業は足元の物価高対策に悩まなくてはならない。働く人も「年収の壁」に悩むことになる。日本経済の大きな課題のひとつのようだ。
2023/10/10