米国小売業ランキングで注目したいのは、1位のWalmartと6位のTargetである。コロナ前の2社は、成長率はほぼ同じであり、コロナ禍でも両者とも売上を急増させ、とくにターゲットは大きな成長率を示した。ただ、Walmartが堅調な成長を継続しているものの、Targetは成長に陰りが見え始めている。食品の売上比率が高い企業と、アパレルをはじめ非食品に強い企業のビジネスモデルの違いが、コロナ後の差を生み出していると思える。
▼ランキング2位のAmazonの成長率は鈍化傾向だが、Walmartとの2強体制に変わりはない。米国内の売上シェア70%の状況は過去5年間での変化はなく、米国が依然として主力市場となっている。コロナ禍での直販及びマーケットプレイスの拡大に加え、閉店傾向にあったリアル店舗の売上も22年には再び伸びを見せている。また、クラウド事業のAWSが売上全体の1割強、近年では広告収入も拡大して収益に貢献している。
▼業態別に見ると低価格を訴求するホールセールクラブ(会員制倉庫型店舗)業態が好調である。過去5年間の年平均成長率は7.8%であるが、直近1年間では10.9%と、コロナ禍でとくに売上を伸ばしている。代表的企業は、Costco(米国内で約560店舗展開)とSam Sam’s Club(同約600店舗)である。Costcoの22年度の売上高は約1299億ドル(対前年度比12.2%増)、Sam’sClubは約587億ドル(同8.9%増)となっている。
▼好調要因としては、物価上昇懸念の高まりになる。年会費を支払ってでも中長期的な価格的恩恵を受けたいとの意向が働き、会費支払いに抵抗のあった層も流入しているようである。2つめの要因は、コロナ禍で発生した物流の混乱への適切な対応が奏功し、結果として急拡大した需要に応えることができたことがある。商品調達ルートの維持にいち早く着手し、販売機会の損失を未然に防いだだけでなく、安価な商品を安定的に供給し続けたことで消費者の満足度を向上させたのだ。
2023/10/14