ドイツで創業したハードディスカウンターのもう一方のLidlのだが、米国事業の展開は、スムーズなものとは言えないようだ。15年6月に米国本社を設立したのだが、約2年を経て、ようやく1号店を開業した。先行するAldiや、ダラーストアなどの多業態を含む競合を前に足踏みが続く感じである。Aldiは「価格が安く、食べてみたら品質もよかった」という印象、Lidlは「肉や魚の種類が多く、輸入食品を前面に出し、AldiとTrader Joe’sの中間で買物が楽しい店」というイメージが残っている。
▼2018年にニューヨーク市郊外のロングアイランドを地盤とするSM Best Market の27店舗の買収を弾みとして、東海岸を中心に約170店舗を展開するまでになった。フィラデルフィア郊外のDCに1億4500万ドルを投資しているので、本格的な拡大に繋がるのであろう。Aldiも現在の地盤を構築するまでに、米国に進出して50年以上の年月をかけていることを考えると、Lidlの出店ペースも遅いものではないのかもしれない。
▼ただ、米国在住の小売業アナリストによると、Lidlの米国市場開拓における課題が存在すると言っている。それは、① 先行するAldiの存在、② PB比率の高さ、③ ダラーストアとの競争にあるとの事だ。まず、Aldiだが、既に全米の主要商圏に多くの店舗を展開、価格の安さを軸に顧客ロイヤルティを獲得している。その上、ECの体制も強化しており、米国のSM市場全体にとっても無視できない存在になっているのだ。
▼そして、米国の消費者にとってLidlのPBや社名は聞き慣れないものであり、購買に至るまでのハードルが高い。消費者は食品に関しては保守的な一面があり、一般的にPBを強化しつつもNBも戦略的に活用している。自社PBをいかに訴求し、認知を広げていくかが大きな課題である。価格競争では、Dollar GeneralやDollar Treeも脅威である。昨今の食品強化の動きは、圧倒的安さと食品・非食品双方の豊富な品揃えで支持を集めている。
2023/10/17