Walmartが1987年に「Hypermart USA」フォーマットを展開した。これは、2万㎡(約6000坪)の店舗で壮大な1フロア、衣食住のフルラインスーパーで、フランスのカルフールをコピーしたものであった。米国小売業見学ツアーで訪問した際には、店舗の大きさに、そして、お客さまでごった返す売場に驚いた。大繁盛しているように見えたのだが、10店舗以上展開した後、突然全店を閉店してしまった。
▼日本の業界マスコミもこの閉店を「大失敗だった」との論調で報道した。大きすぎるのも難しいものと理解していた。ところが最近になって異なった解釈をする業界コンサルタントの説を聞くことが出来た。島田研究室の島田陽介氏である。このフォーマットは大繁盛したが、ある日突然、Walmartが全店閉店したのは、それが商圏内・近隣集客でなく、広域からの集客で売れたことにあるからだったとの説をセミナーで解説したのだ。
▼どちらが真実なのかは分からない。Walmartは、翌1988年に「Supercenter」フォーマットを開発した。「Hypermart USA」の半分ほどの店舗面積にしたのだが、これが大成功して最強のフォーマットとして称賛され今日に至っている。こう見ると、単に店舗サイズの適正の問題にしてしまうのは面白くない。我が社の意思に基づき模索した結果がこのサイズになったとのストリーが欲しくなる。そこで、島田説が「御尤もと」と考えている。昨日、記したTrader Joe’sの価値観のようにだ。
▼Walmartは、商勢圏を想定し、それを限定商圏に再分割し、その限定商圏内の競合他社を徹底殲滅して行く。それを米国全土に綿密に広げることでの売上規模拡大を実現したのだ。端的に言えば、商圏内の同じ消費者を繰り返し来店させてカスタマーする努力、そしてその数を拡大していく努力を実行してきたことになる。物理的に「繰り返し何度も、自分の店舗に買物に来てくれる人」を増やす事になる。商圏を限定する事で、そのカスタマーの必要性が現実味を帯びてくるのだ。日本の小売企業とは異なる戦略であったのだ。
2023/10/22