9月の消費者物価指数によると、総合指数は106.2(2020年=100)であった。生鮮食品を含む食料が前年同月比9.0%増と高止まりし、8月の8.6%から伸び率が拡大した。生鮮食品が猛暑による野菜の生育不良で9.6%増(8月5.5%増)、生鮮食品を除く食料は8.8%増(8月9.2%増)で鈍化がみられるが、「エンゲル係数」は26%を超え、40年ぶりの水準に達した。賃上げの波及は鈍く、消費意欲をそぎかねない。
▼小売業も、不況への不安とお客の変化に対する対応力が試されそうだ。消費者が生活に熟達した日本は、非大衆社会である。その上でインフレ、円安、エネルギーコストの上昇が続いている。賃上げは限られた企業での実施であり、所得格差は拡大している。高齢化、ライフスタイルの多様化•個別化が進行するという、かつてのチェーン理論を支えた大衆化とは全く逆方向への動きが始まっている。
▼これまでの日本のチェーン企業が採った戦略は、「同じモノを・安売り」するという原始的な方法であった。確かに同じモノなら「安い」方がいい。そこで生まれたのが薬剤のジェネリックに由来するPB商品である。このNB商品とその廉価版であるPB商品を扱う店舗はお客さまにとっては同じ品揃えの店になる。しかも、米国を視察した際も、日本の小売業は、「業態」という品揃え方法を学んだのだ。それは、売場の便利さとサービスといった相対的な「差」を追及しただけになる。
▼米国小売業視察の目的は、チェーン経営のあるべき姿を確認するためであったはずだ。出来なかったが、本来米国に学ぶべきは、業態ではなく多種多様の「企業個性」であり、革新続ける現場の姿、独自商品(群)による店舗の独自化、限定商圏の消費者を、「カスタマー」(繰り返し来店する顧客)に変える力。そのカスタマーを、更なる来店を可能にする売場づくり(変更力)。そして、その為のMD力、ロジスティックス機能との連携の姿。これらを実現する為のスーパーバイザー育成手法などであった。これらの技術を磨くことでチェーンの拡大が達せられるのだと思う。
2023/10/24