帝国データバンクは10月17日、特別企画:「食品スーパー業界」動向調査を発表した。食品スーパー事業(GMS を含む)を展開する企業を調査した結果、22年度の損益状況が判明した1100社のうち、31.3%にあたる349社が「赤字」ということである。前年度から「減益」(37.5%)となったケースを合わせた「業績悪化」の割合は全体の約7割に達し、コロナ禍前後の水準を上回って過去最高を更新とある。都道府県別の「赤字」割合は、地方を中心に目立ち、最高は鳥取県の71.4%であった。
▼外食から自炊への回帰など節約志向の高まりで食品スーパーを利用する顧客層の拡大が追い風となっていた。また、帝国データバンクが7月に「価格転嫁の動向」について調査した結果は、4割超が仕入れ値上昇に対して「50%以上」の価格転嫁ができていると回答しており価格転嫁率の平均も47.0%と全業種平均(43.6%)に比べて相対的に高いく、22年度の売上高では4社に1社が前年度から増収を確保していた。
▼一方、電気・ガス代など水道光熱費、人手不足や最低賃金の上昇によるパート・アルバイトの人件費など「インフラコスト」の増加分は、価格転嫁できない食品スーパーも多く、収益を押し下げる要因となっている。ディスカウント業態やドラッグストアなど他業態の進出、競合店の割安なPB商品の集客力に対抗するため、値下げ戦略を取らざるをえなかった地場の中小スーパーもあり、値上げによる増収効果を享受できず、利益面で悪化したケースが目立った。
▼客足好調な地場スーパーでは、扉付きの冷凍・冷蔵庫の導入による節電で光熱費を圧縮するほか、セミセルフレジの導入や商品の自動発注などデジタル化による省力化といったコスト削減で粗利の確保を目指すケースが多くみられる。独自性を打ち出しやすい惣菜で荒利額を確保し、低価格戦略の原資にするスーパーもあり、単純な価格競争以外の訴求力が必要となっている。
2023/11/02