Walmart、オムニチャネル・リテーラーの本領発揮か・・・

全米小売業協会(NRF)は2日、年末商戦期間(11月~12月期)の見通しを発表した。前年同期比で3~4%増となる見通しだ。22年が5.4%、21年は12.7%の二桁増加を記録し、20年もコロナ前との比較になるが9.1%の増加だった。それから見ると、今年の予想は、2010年~19年の平均3.6%成長とほぼ同じであり、インフレに金利の上昇など経済に逆風が吹く中、最大の繁忙期に成長が鈍化するとの予測になっている。

▼米国経済は景気後退の懸念があるにもかかわらず底堅い成長を遂げている。ただ直近では高止まりするインフレに金利上昇、学生ローンの返済再開が家計を圧迫している実態があるようだ。無店舗販売は前年同期比で7~9%増となるとの予想である。現地のアナリストは、ネット販売は引き続き拡大基調が続くチャネルだが、それはオンラインショッピングの便利さ以上にショッピングセンターの衰退も要因になっているという。

▼有名なショッピングセンターがゴーストタウンと化しているという。ロサンゼルス郊外の「Puente Hills Mall」もそのひとつ。ここは1985年に封切られた映画「Back to the future」で物語の上で重要な出来事で使われたモールなのだが、大手テナントが次々に撤退し、現在は映画館のチェーンとスポーツジムのみになっているとのこと。他のモールもこれと同様で、地方のモールはどこも悲惨な状況にあるという。

▼反対に、NRFが成長鈍化を発表した翌日のWalmartの株価は、50年来の最高値を記録している。調査会社によるとWalmartは、全米食品マーケットの25.2%のシェアを握っているという。これまでは、低所得者層向けのチェーンとして知られていたが、今はカーブサイド・ピックアップや宅配サービスでお金だけでなく、時間まで節約できるので富裕層までもが買物するチェーンストアだ。集客出来るからマーケットプレイスに出品する業者も集まる。結果、広告売上も増加するなどで株価が底上げされ、更に豊富な資金をバックに流通DXなど便利な買物実現に投資が回され、商品価格も押さえられていく。勝者の無限ループのようだ。

2023/11/10