昨日の続きになるが、米国では寄付すると税制優遇されるので、富裕層はむしろ寄付したいというが、日本では、あげるだけというイメージで強くメリットが少ないようだ。税の控除対象となる寄付先が少ないのだ。日本で広がりを見せるのが「ふるさと納税」になる。税収の少ない地方の自治体を応援する形の寄付のはずだが、高級食材などの返礼品を充実させる自治体が相次ぎ、返礼品目当ての趣が強まってしまい、本来の目的から外れてしまった。
▼「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた故郷に、自分の意思で、いくらかでも納税できる制度があっても良いのではないか」との問題提起から「ふるさと納税」は制定された。政府は、この制度で寄付文化を醸成しようと企てたのであろう。「納税」という言葉が使われているが、都道府県、市区町村へ「寄附」することになる。確定申告を行うことで、自己負担額の2,000円を除いた全額が所得税及び住民税から控除される特典があるが、官製の通信販売になってしまっている。
▼今月6日、国立科学博物館が物価高騰受け資金不足になりクラウドファンディング(CF)で1億円募集したところ、9億円超の支援金が集まったと発表した。篠田謙一館長は記者会見で、「継続的な寄付に変えていくことが重要。CFはあくまで一過性のもの。毎年いくらかのお金をサポートしてくれる人を増やしたい」と説明している。独立行政法人ではあるが、国がもう少し支援すべきだとの意見もある。行政として本来の寄付と言えるメニューを政策として考えるべきだと思う。
▼CFは、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。多数の人による少額の資金が他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを意味する。発音上の問題で「cloud(雲)」と混同し、クラウドコンピューティングと関連あると思われたりするが関連性はない。寄付は基本的に恵まれない人や文化芸術の振興のためにするものと思うが、大阪府は、プロ野球の阪神とオリックスの優勝パレードで募る5億円のCFを募集している。ここでも、あるべき寄付とかけ離れてしまっているように思える。
2023/11/14