社員を護る、産地を護る、お客様を護るとあった・・・

呉服の専門店である(株)やまとの会長である矢嶋孝敏氏が2015年に『きものの森~作ること売ること着ることの経営論』(繊研新聞社)という単行本を執筆、出版した。氏の経営論として大変に興味深い内容であり、考え方を参考にさせて頂き、大切にして来た。特に印象深かったのは、和装呉服の分野での産業としての自立を目指して、社員を護る、産地を護る、お客様を護るというフレーズである。

▼文化的な活動を含めてのことばになるのだろうが、端的に表現するなら、生産者から高く買い入れ、お客さまには価格を抑えて販売し、結果として社員の給料を上げるという事になるのだろう。その為、様々な課題解決に向けトレードオンの取組に努力を重ねることなのだ。具体的には、1978年に設立した財団法人「衣服研究振興会」を、2017年に財団名称を一般社団法人「きものの森」に改名して種々の活動を展開している。

▼日経MJ(12月10日号)に、中川政七商店が取り上げられている。江戸中期の1716年に「奈良晒」の卸問屋として誕生した企業だが、創業家の中川政七会長が2002年入社し、生活雑貨のSPAに転換。23年2月期の売上高は75億円(20年で5.5倍)に伸び、会員数も73万人とここ3年で3.6倍に膨らんでいる。かつての問屋が減り、メーカーの廃業も増える中にあって「産地の一番星企業が輝けば産地が活性化する」との一念で産地全体の支援まで目指している。

▼国指定の「伝統的工芸品」の生産額は21年度に870億円、80年代のピークに比べ約6分の1と高齢化や人口減による産地の衰退は想定以上に進んでいるとある。中川政七商店は、インバウンドの回復により高まる工芸人気を受けて、福井で越前漆器、奈良では革靴技術でスニーカーを創るなど、各地の中小工芸メーカーの経営や商品開発・販売まで一貫して支援して来ている。最近では、台湾や中国など海外販路の開拓にも力を入れ始めたとある。食品スーパーも生鮮食品の生産者育成に向けての施策が欲しいと思える。

2023/12/11