12月5日のNHK『クローズアップ現代』は、全国各地でライフラインとも言える食品スーパーの閉店が相次ぎ、買い物が困難になっているとの内容が放映された。全国でスーパーの閉店が相次いでおり、「フードデザート(買物困難者)」が増え、栄養が偏ることや外出が減り引きこもりがちになるなど心身へのリスクが高まっている。その上、スーパーと取引のあった業者や農家は売上が減るなどの面でも影響が大きい。解決のために財政支援に乗り出す自治体などの対策を追うものであった。
▼「買物困難者」は、肉や魚、野菜など生鮮食品が入手困難な地域を指す。その地域の住民は栄養状態が悪化し、健康を損ねる恐れがある。この買物困難者は、地方だけでなく、東京都心にも広がっている。23年11月に麻布台ヒルズが開業するなど今も発展が続く港区だが、手ごろな価格で買えるスーパーや個人商店が撤退し、高齢者を中心に公営住宅で暮らす人や年金生活者らは、買物困難者のリスクを抱えているのだ。
▼「買物困難者」に関する全国調査はないが、買い物難民の高齢者は店舗が少なく公共交通網が不十分な地方に多い。農林水産政策研究所は食品スーパーなどから500メートル以上離れ、車の利用が困難な高齢者を「食料品アクセス困難人口」と定義し、5年ごとに推計結果を公表し、15年では全国825万人とされている。うち地方圏は447万人で5割強を占めたが、東京でも買物困難者が拡大している。15年時点の東京圏は198万人。05年に比べて1.6倍で、他地域よりも増加率が顕著だったのだ。
▼地方や郊外では人口が減少した地域を対象に食品スーパーへの移動手段の提供や移動販売、食品の宅配などの対策が打ち出しやすい。対して都心ではリスクを抱える高齢者らが分散しており対策が難しいという。茨城キリスト教大学の岩間信之教授は「都市のフードデザートは家族や地域住民とのつながりが希薄になるソーシャルキャピタル(社会関係資本)の低下の影響が大きい」と分析する。今後、高齢化の進展に伴い、都心でのフードデザートのリスクはさらに高まっていく恐れがある。
2023/12/15