「価格」と「価値」の両軸を追求する・・・

新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要でブームとなった「唐揚げ専門店」の倒産が急増している。株式会社帝国データバンク発表の「『唐揚げ店』倒産動向(2023年11月報)」によると、23年1~11月の倒産件数は22件、前年の7倍規模になるとある。これは、負債1000万円以上の法的整理による倒産件数を分析した結果であり、1~2店舗展開の事業者などの閉店を含めれば多くの唐揚げ店が市場から淘汰されたとみられる。

▼倒産件数増加は、競争が激化しているのに加え、唐揚げチェーン店での価格「約340円」(3個平均)に対し、食品スーパーやコンビニの唐揚げは「220円前後」、冷凍唐揚げは「170円程度」に留まっていることにもあるようだ。この割高感が、「揚げたて」のメリットを上回ってしまい購買意欲が伸び悩む要因にもなっているという。唐揚げ自体の人気は根強いのでチャネルシフトが進んでいるようだ。

▼さらに、原材料費高騰の波も打撃を与えている。唐揚げに使用される輸入鶏肉は3年前から約2倍に値上げし、調理に欠かすことに出来ない食用油も1.5倍に高騰しているからだ。その一方で、唐揚げのもつイメージは、「安くて美味しい」にあるので、これまで以上の価格での販売は難しいといった面も多く見られ、客離れの懸念と仕入れ価格高騰による収益減の板挟みとなり経営を悪化させてしまう店も少なくないようだ。

▼ただし、唐揚げの人気は依然高いことは確かだ。報告書の中でも、「ポストコロナで外食需要が回復するなど競争も激化するなか、『揚げたて』以外の付加価値が提供できない専門店で淘汰が進むとみられる」とのコメントがある。大きく変動する外部環境に対応するためには、「独自化の対応」と「価格政策の強化」の両立が必要になって来ている。食品スーパーも対応すべく商品開発や商品調達の拡大、売場づくりで「価格」と「価値」の両軸を追求する戦いが激化している。

2023/12/19