年末挨拶の中で出た「小売業ビッグ2」の話・・・ ②

23年度、小売業界の大きな話題のひとつが、セブン&アイHDの「そごう西武」をフォートレスに売却したことだろう。アクティビスト(株式の世界では株主としての権利を積極的に行使し、企業に影響力を及ぼそうとする投資家)のバリューアクトからの提案は、要点として祖業であるイトーヨーカ堂を切り離し、コンビニエンスストア事業への集中を要求するものだったのだが、決算報告書を見れば彼らの提案の妥当性も理解できる。

▼祖業であるGMS事業が、イオンとセブン&アイHDの現在の事業にとって、どんな位置づけにあるのかの違いは「株主構成の違い」にあると言う。外国人株主比率と個人株主数の違いということだが、23年2月末のイオンの外国人株主比率は12.7%、セブン&アイHDは33.06%、トレンドでみてもイオンは10%~12%で、セブン&アイHDのそれは28%~35%とほぼ一定している。決定的な差は個人株主数になる。

▼個人株主数はイオンが約86万人、セブン&アイHDは7万2千人、それもセブン&アイHDは17年の8万8千人からその数が減っているのに対し、イオンは66万人から86万人へと約20万人増加している。セブン&アイHDの個人株主数の2倍を超える株主が増えたことになる。アクティビストの一定の合理性を持った提案が受けいれられ易い素地がセブン&アイHDにはあるし、イオンには個人株主の壁がそこに存在する現実だ。

▼個人株主数の違いは、イオンは85年から株主優待制度を導入し、セブン&アイHDは優待制度を導入していない結果とも言える。イオンの株主優待制度の概要は、100株保有者には半年毎にイオンでの買物総額の3%、1000株保有者には5%、3000株保有者には7%のキャッシュバックが行われるというものだ。例えば、30万円(21日終値3140円)程度で100株を保有すれば3%のディスカウントを受けられる。この特典大きいものになる。(つづく)

2023/12/24