2024年、食品スーパーを取巻く環境は・・・④

製造業では、円高に転じることで仕入れコストの低減につながるものの、どこまで今年中の卸売価格に反映されるのかは、製品によって差が出そうだ。食パンや小麦粉、食用油など比較的加工度の低い商品においては、価格転嫁のタイムラグが相対的に短い。一方で、牛乳や卵などの畜産製品のタイムラグは相対的に長い。したがって、今年中に為替相場が円高に転じたとしても、流通業界でコスト下落に転じるのは一部で、販売価格波及は後になりそうだ。

▼ただ、現場では値上げに比べて値下げの方が早く進む。とくに需要が落ち込むような局面では、販売数量の落ち込みを恐れて値下げへの圧力が高まりやすい。しかし、賃上げが継続され、物価上昇率が鈍化すれば、実質賃金は上昇に転じる。消費者の購買力は決して悪くはない。無理な値下げが蔓延するようになれば、収益性の悪化を招き、最終的には人件費の圧縮、すなわち賃金の抑制につながりかねない。良いサイクルを無くすことに繋がる。

▼日本経済は、ようやく賃金と物価が両立し、経済活動は正常に循環しつつある。コスト上昇分を価格に転嫁でき、消費者は先行きの値上がり観測から消費を抑制することを避けようとなれば、企業の収益性も改善し賃金を上昇させる。それが購買力維持に繋がる。こうした好循環を創出しなければならない。一旦逆のスパイラルに戻れば、消費者のデフレ期待が定着し、人口減少が加速する中で、日本はより深いデフレに陥るリスクもあるからだ。

▼世界情勢を見ると1990年以降のグローバル化の流れが途切れ、再びブロック化に向かう様相もある。小麦や大豆といった穀物価格も上昇傾向をたどるリスクがある。原材料コストが嵩む中で、販売価格に下落圧力が強まれば、収益性は厳しくなる。一方で、人手不足は今後一層深刻化し、人の奪い合いは賃金上昇圧力を高めそうだ。その悪影響を最も強く受ける業界の一つが流通業界になる。適切な販売価格を維持すること、適切な賃上げを実施すること、そしてAIや各種IT投資を進めて省力化に邁進することが重要になりそうだ。それぞれの企業真価が問われる1年となりそうだ。

2024/01/11