競合業態の動向は・・・(ドラッグストア ③)

ドラッグストア(DgS)業界で驚きのニュースがある。「ツルハHD」は「物言う株主」として知られる香港の投資ファンド「オアシス・マネジメント」の標的になっており、昨年8月の定時株主総会で、創業家支配など企業統治不全を理由に「株主提案」を実施したのだ。会長退任や社外取締役の選任を求めたが、すべて否決されている。これで落ち着きを見せたと思っていたら、米国の総合情報サービス会社ブルームバーグ社が、11月15日に「ツルハHDが買収受け入れによる非上場化を検討している」という情報を発したのだ。

▼「オアシス・マネジメント」の提案を退けたのは、13%強の株を持つ筆頭株主のイオンが株主総会の9日前に「会社提案」に賛成すると表明したからだ。アナリストの分析によれば連結子会社の「ウエルシアHD」と「ツルハHD」の経営統合を実現するために援護射撃をしたという。ウエルシアHDの22年度の売上高は1兆1442億円。ツルハHDは9700億円。両社が統合すれば2兆円を超えるメガドラッグが誕生することになる。

▼イオンがツルハと資本業務提携したのが1995年。提携当初は共同出店などを行ったが、その後、ツルハは自主独立を貫いてきた。その後、社外役員選任基準を制定し、イオンの岡田会長はツルハの社外取締役を退任した。イオンとの距離を置きたいからとの声も聞こえた。今回の援護射撃で、筆頭株主のイオン、第2株主のオアシス・マネジメントの両方から外堀を埋められ始めており、今回の非上場化の検討は二つの圧力を排除するための策との分析が強い。

▼ツルハHDの22年5月期は159店の大量出店をしたにもかかわらず減収減益と厳しい決算となっている。23年5月期は、新中期計画の取り組み効果もあり、業績は回復し、今期も上向いているが、「集客の武器になり得る戦略カテゴリーを持っていないこと」に原因があるようだ。総花的なツルハの店舗はお客を奪われるケースが増えているという。それにしても上位グループ(ウエルシアHD、ツルハHD、マツキヨココカラ&カンパニー、コスモス薬品、スギHDなど)への集中は凄まじいものがある。

2024/01/31