「リテールメディア」という言葉が、国内流通業界でも流行語のようになり、コンビニエンスストアやドラッグストアの大手企業を中心に、リテールメディア化を図る動きが急加速している。これほどまで脚光を浴びているのは、米国のリテールメディア市場の成長によるものだ。既存のビジネスモデルを打破し、新たな成長フェーズへと移行するためのツールとして、リテールメディアに対する期待感が高まっているようだ。
▼「広告サービス」の売上で圧倒的なボリュームを誇るのがAmazon.comになる。22年度の「広告サービス」の売上高は377億ドル(約5兆6000億円)に上り、リテールメディア市場において圧倒的な売上になる。Walmartも追走してはいるが、約3700億円とシェアはまだ限定的だ。ただ、19年に広告プラットフォームを自社で開発、運営し収益を上げるというスキームを確立している。小売業がプラットフォーム化の点で注目に値する。
▼日本国内のリテールメディア市場も成長基調にある。国内の調査会社のデータによると、国内の広告主によるリテールメディア広告への年間支出総額は、EC事業者と店舗事業者を合わせ、23年度で3625億円(対前年比22%増)と伸長している。27年には、約2.6倍に増加し、9332億円に達するとの予測もある。4年後には1兆円を目前にするまで市場が巨大化すると推測されているのだ。
▼ただし、米国との違いもある。自社が運営するECサイトへの広告出稿が主な米国に対し、日本では、アプリ広告、店内のサイネージなどを活用した広告の範囲でしかない。リテールメディアはその名称が示すとおり「メディア」であり、「広告媒体」ではないのだ。配信したコンテンツに対し、顧客の行動データや購買データに基づいた検証を行い、広告出稿者に正確にフィードバックし、配信効果を可視化して共有することが大事になる。リテールメディアの価値を高めるための取組は始まったばかりと思う。
2024/02/17