惣菜の独自化の戦いが始まった・・・

社団法人「日本惣菜協会」は、1980年より惣菜に関する調査研究を開始し、『惣菜白書』として市場データの発表を続けている。『2023年版 惣菜白書』によると、2022年の惣菜市場規模は10兆4652億円、前年から3.5%増であった。コロナ禍初期には、買物を抑える動きや保存性の低い惣菜への需要が低下したため、20年の市場規模は10兆円を割り込んだ。ただ、21年には増加に転じ、22年にはコロナ前の水準に回復した。

▼23年の実績は把握できていないが、食品スーパーの店頭動向をみても、堅調に推移しており、10兆円台後半への到達も期待できそうだ。惣菜市場は依然として成長基調にある。ただ、「好調の惣菜はだが、大きな岐路を迎えつつある」との声をよく聞くようになった。それは、顕在化したインフレの影響を心配してのものになる。多くの素材や調味料の原価上昇、水道光熱費の高止まりなど部門運営コストの高騰による影響だ。商品の値上げに踏み切らざるを得ない状況にあるという。

▼物価高騰が続く中、消費者の価格に関する感度も厳しさを増している。原価上昇分を単純に価格転嫁するわけにはいかない。内容量を減らしたり、安い原材料に切り替えたりしての売価据え置き策も採られているが、抜本的な解決策にはならない。更には、製造加工に人手の必要な惣菜部門での人手不足は喫緊の問題になっている。新たな競合業態も増えており、テイクアウト需要が続く外食、価格競争力の高いドラッグやディスカウントストアなど競争は激化する一方なのだ。

▼こうした環境の中、惣菜部門の改革に本腰を入れる食品スーパーの動きが活発化して来ている。価格面の応力だけでなく、新たな価値を訴求できる商品群を安定的かつ効率的に開発・製造できる体制づくりだ。その実現で、競業他社や他業態に対して差別化できるようにすることになる。それができるかできないかが近い将来、企業間の優勝劣敗を決定づけてしまうといっても過言ではない。生鮮(特に野菜)と惣菜の強さが食品スーパーの武器になると思えるからだ。

2024/03/03