漫画家の鳥山明さんが亡くなった。私も「アラレちゃん」や「ドラゴンボール」を読んで育ったとは嘘になるが、二人の子供の成長の過程で出会った漫画家である。日本の漫画が海外で「MANGA」と呼ばれ、世界に広まるきっかけを作った先駆者でもある。代表作「ドラゴンボール」や「Dr.スランプ」はアニメ化され大ヒット、社会現象を巻き起こした。訃報に接した各国の政府やファンから追悼の声があがり、影響力の大きさを物語っている。
▼漫画家を目指す人へ、「第三者の目で自分の作品を冷静に読んでください。独りよがりになっていませんか?自分や仲間だけが楽しい内容になっていませんか?」とメッセージしている。連載していた「週刊少年ジャンプ」は後発の漫画誌であり、新人作者の発掘に熱心だった。それ故、作品の評価は厳しかった。読者の反応が悪ければすぐさまテコ入れを図り、それでも人気が出ないと打ち切りになるという、熾烈な競争とせめぎ合いがあったようだ。
▼「ドラゴンボール」も当初は人気が出ず、存続すら危ぶまれたという。鳥山さんは、編集者と原因を探り、好みの冒険物語から格闘ものへチェンジしたことで風向きが変わった。卓越した画力、個性的なキャラクターによる緊迫のストーリー展開。漫画原作などを軸に、複数のメディアを組み合わせた「メディアミックス」の手法による商業的成功も、鳥山さんの作品こそ、その原点であり、アニメ大国としての礎を築いたといっても過言ではないだろう。
▼鳥山さんは編集者について、「丁寧だが真意が見えない人より、言いたいことを言ってくれる人のほうがいい」と語っていたという。また、「自分なりにあれこれ考える根性とセンスが一番重要」とも述べていたという。受け手のことを考えつつも、自らを貫く。読者のために描くことは、読者に気に入られようとおもねる事ではないということか。単行本の売り上げは全世界累計で2億6000万部。ゲームなど含めた累計の経済効果は230億ドル以上といわれる。68歳という若い旅立ちに、ご冥福を心からお祈りします。
2024/03/17