今月8日に発表された、総務省「家計調査」によると、24年1月の消費支出は前年同月比で実質▲6.3%、11ヶ月連続のマイナスとなった。特に勤労者世帯で▲7.7%と大きく下落している。年金暮らしを中心とする高齢者が主体の無職の世帯は▲1.9%であった。日本銀行が、金融政策の正常化に一歩踏み出す決定をだしたのだが、消費の動向は更に気になってくる。政府を始めとして、企業も家計も「金利ある世界」に上手く戻れるのだろうか。
▼そもそも消費はどのように決定されるのだろうか。昨年、日経・経済図書文化賞はじめ様々な賞を獲得した『現代日本の消費分析 ライフサイクル理論の現在地』(宇南山卓著 慶応義塾大学出版会 2023年)との書籍がある。「現代日本において消費がどのように決定されているのか、その決定構造にどのような含意があるのかを明らかにする」とあったので、高額(7,480円)であったが購入してみた。難しくて既に手元にない。(笑)
▼経済学では、消費がどのように決定されるかを「ライフサイクル理論」と呼ばれる枠組みで考察するとある。この理論、大きく2つの前提を置いており、1つは「人間は消費の変動を嫌う」という前提。一定の生活水準を保つ方が望ましいと考える。もうひとつが、生涯の消費金額は、預金などの資産や現在所得に加え、受け取り予定の将来の賃金や年金なども含む「自分が使えるお金」に制約されるというものだ。
▼この前提から導かれる消費行動とは、生涯の可処分資産を一定のペースで使う行動ということになる。実証研究からも、日本の家計の消費行動の多くは整合的であるとのことだ。足元の経済状況のみならず、長期的な要因が消費に影響を与えているのだ。勤労者世帯で消費の落ち込みが大きいのは、人々が今後の経済成長に悲観的な期待をもっており、将来の所得期待が低迷している可能性が高い。一時的な特別定額給付金や定額減税ではなく持続的な所得の上昇が鍵になるようだ。
2024/03/26