同じ轍を踏んでしまわないか・・・

人手不足は、日本経済の深刻な制約になりそうだ。従業員不足のため、営業時間を短縮せざるを得ないと言った飲食店、運転手不足による路線バスの減便も急速に広がっているようだ。需要はあるのに人手不足で商品やサービスを提供できないという「人手不足倒産」も深刻のようだ。しかも、働き手の総数は、女性と高齢者の就業拡大で過去最多圏にあるという。いま起きている人手不足は、この問題の入口に過ぎないということなのだ。

▼足元の人手不足感が強まっているのは、働き盛りと言われる25〜44歳の就業者が大きく減ったのが原因になる。この約10年間で290万人も少なくなっている。これは大阪市の人口を上回る人数になる。「団塊の世代」は労働市場から退出し始めている。育児中の女性は時間に制約を抱えざるを得ないし、高齢者はフルタイム就業が難しい。若年労働力の目減りを、女性と高齢者の労働参加で補うモデルが限界に近づいていることになる。

▼2月に発刊された『「働き手不足1100万人」の衝撃』(プレジデント社)によると、高齢化と人口減によって社会に必要な労働力の需要と供給のバランスが崩れ、30年に341万人、40年には1100万人もの労働供給不足に陥ると分析している。「人口が減少すれば需要も減り、人手不足は深刻にならない」という縮小均衡論もあるが、人口が減っても高齢化で労働需要が高止まりし著しい人手不足になると見通している。生活維持に必要なサービスが次々と破綻すると見ている。

▼一方、「必要は発明の母」という人類普遍の原則が、労働制約社会に真っ先に突入する日本で発動されるのではないか、機械化や自動化、シニアの活躍、労働者と消費者の垣根をなくす取り組みなどで発明の萌芽が感じられるとある。対応は、長期的な変化を見据え、備えを厚くするよう訴えているのだが、団塊世代が後期高齢者に到達し、医療や介護の負担が重くなり、現役世代の活力がそがれることを憂いた「2025年問題」も叫ばれていた。しかし、これまでの対策は十分だったとは言い難い。同じ轍を踏んでしまわないかと心配である。

2023/03/31