「ネガティブ・ケイパビリティ」とは・・・

帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)氏の『ネガティブ・ケイパビリティ』(朝日新聞出版)を急に思い出した。この本は、2017年04月に出版されたものだが、何日か前に届いたある団体の機関誌の「随想」の欄に、キャリアコンサルタントをしている友人が書いた文章の中に出て来た言葉が「ネガティブ・ケイパビリティ」だったからだ。キャリアコンサルタントとしての友人が、学窓を巣立ち新社会人になる教え子たちに、今年贈った言葉とあった。

▼「ネガティブ・ケイパビリティ」とは、英国の詩人ジョン・キーツが兄弟に宛てて書いた手紙に出てくる言葉で、「事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力」の事という。能力という言葉は、「理解、解決、対処」の意味で使われ、それらを身につけようと努力しているものだ。しかも人間の脳には「分かろう」とする性質があり、性急な証明や理由を求めがちだ。しかし、分からないことを分からないまま、宙ぶらりんの状態で受け入れ、耐え抜く。この能力こそがネガティブ・ケイパビリティなのだ。

▼キャリアコンサルタントとしての友人は、数年前から感じているのが社会人基礎力の低下傾向と言う。特に「考え抜く力」に課題を感じるという。90年代以降、少子化を背景にした高学歴志向、更には就職活動でさえ受験勉強のように傾向と対策を組み、専門的に支援する企業などが発達して来た。溢れる情報の中で就業条件を横に並べて就職志望先を決める傾向があり、自分の興味関心との接点も浅くなりがちなのだろう。

▼就職志望先企業の理念や歴史、事業内容や社風、将来展望をまず研究して、自分が共感する点とその理由、そこから考えて欲しいのだが、興味は「どう書いたら、エントリーシートが通過するか」にあり、とにかく早期採用を求めているという。いろいろな経験を自分でしっかりと省察しながら、職業観、勤労観が形成されるべきで、4月からの新しい生活での不安を語る学生たちに対し、「悩め悩め」と言うのだ。容易に答えの出ない事態に耐えうる能力を付けさせたいから、この言葉「ネガティブ・ケイパビリティ」を贈ったとある。

2024/06/06