業界誌『Diamond Chain Store』誌の恒例企画「STORE OF THE YEAR」で1位に輝いたのは、「オーケー銀座店」だった。東京の高級店街の“一等地”に開店し、「地域一番の安値」政策を実践したことから話題となった。このオーケーだが先月、「オーケー日本橋久松町店」を開業した。ここでもEDLPを掲げての売価政策をとっている。地上11階建てのマンションの1〜2階に開いた店舗で、売場面積は約700㎡の小型になる。
▼関西進出など話題の多いオーケーだが、創業者で会長の飯田勧氏が亡くなった。96歳であった。氏は、家業の酒類問屋、岡永商店(現岡永)に1945年入社。58年に岡永商店の小売部門としてオーケーを創業して、東京の上板橋で1号店を開いた。67年に岡永商店から分離し、オーケー社長に就任。86年に期間特売を止め、競合店よりも安く販売するEDLP戦略を打ち出した。2014年からは代表取締役会長を務めていた。
▼店頭の生鮮品の品質に関して、店側に不利な情報も顧客に示す「オネスト(正直)カード」を考案、展開し13年連続で日本生産性本部が調査する「顧客満足度1位のスーパー」に選ばれている。消費増税時、円未満の端数処理の方法は、切上げ、切捨て、四捨五入の任意の方法とするのだが、多くの小売業は切り捨て表示を選んだ。その時、円未満2桁表示を実行して合理的に企業側のロス対策を展開したことは印象的であった。
▼何よりも、日本経済の発展とともに成長していけるビジネスの種を発掘した「飯田4兄弟」の嗅覚の凄さだ。30年程前に産業界でときおり聞く言葉であった。長男の飯田博氏は岡永元会長、次男の飯田保氏はテンアライド創業者、末弟の飯田亮氏はセコムの創業者だ。いずれも故人になってしまったが、サラリーマンの明日の活力を養う憩いの場の居酒屋、豊かさへの渇望をとらえた食品スーパー。米国から持ち込んだ警備会社と戦前から戦後に価値観が変わる中で鉱脈を発見し、成長させた人物になる。心からのご冥福をお祈りします。
2024/04/09