より人にも環境にも優しい農業への転換を・・・

農と食の分野には、消費者の感情や民意を動かそうと企てる有識者がいるとの論評がある。今もっとも、旬の学者──といえば、東大大学院の鈴木宣弘教授の事なのかも知れない。 農業経済のエキスパートで東大農学部卒後農水省へ。10年以上勤務した後、学界に転じ、日本の食糧危機を訴え、農業行政を鋭く批判し続けている。月刊『文藝春秋』(23年2月号)特集「目覚めよ!日本 101の提言」の中にも、掲載されている。

▼「目的のためには手段を選ばずの鈴木言説を徹底検証する!」との反対意見も多くある。どちらが正しいかの議論ではなく、農業政策の問題として全体に議論が広まることに期待したい。農業再興戦略が見えてくれば良いのだが、現場に近いところのお手伝いをさせて貰うと何だか不安が高まる。日本の農家の平均年齢は68.4歳(22年時点)である。10年もしたら、日本の農業・農村の崩壊が防げないのではないかと心配になる。

▼農業、食に関しては、世界的に大変な時期を迎えているようだ。EUも19年末にグリーン・ディールの方針を「サスティナブルを欧州の成長戦略とする」と発表した。そこで「環境再生型農業」推進と称し30年までに欧州の農地の4分の1をオーガニックに転換する目標を掲げた。結果、民間企業や投資家による大規模な投資に偏ってしまっているとある。また、「温室効果ガス削減」の名のもとに農業をやり玉にあげ、中小の農家を廃業に追いやる一方、農業分野を巨大企業が新ゲノム技術などで独占的に支配する方向に進んでいる。

▼今年のダボス会議でも、「農業が温暖化の原因」とされ、「コメの生産はメタンの最大の発生源の一つであり、温室効果ガスの排出という点ではCO2の何倍も有害」との発言もあった。バイエル社のCEOの発言だが、遺伝子組み換え種子の最大手であるモンサント社を買収したドイツの会社で世界の食の支配を狙う勢力だ。

農業による環境破壊を問題にするのなら、過剰な市場競争を排し、より人にも環境にも優しい農業への転換を促すものでなければならないはずなのだが、何だか怪しくて仕方ない。

2024/04/15