「オムニチャネル」に顧客の購買行動は変化しつつある。この時代に顧客とつながり続け、最適な買い物体験を提供するために企業はどうすべきか。テクノロジーの発展により、あまりコストを心配することなく、膨大な購買データから顧客の行動パターンを分析できるようになった。画像AI技術を活用して来店客の行動分析も可能である。分析結果を聞く機会が増えたが、これまで語られていた顧客の購買行動は、思い込みが多かったように思える。
▼現場で働く人たちは、良く分かっているだろうが、食品スーパーの顧客は、決まっている数品を購入する顧客、冷蔵庫の補充と今晩の夕飯を購入する顧客が、まとめ買いをする顧客より多いのだ。コロナ禍にあっては、まとめ買いをする顧客が圧倒的に増えた。外出が制限されていたので仕方のないことであったが、これからは元に戻るに違いない。まとめ買いが少なくなるならば、的確に「ついで買い」の非計画購買を促す商品と販促物を訴求していく必要性がある。
▼新入社員から、「オムニチャネル時代の売場は、どう考えれば良いのですか」との質問が出た。こんな事を考えて入社して来たのかと驚くと同時に答えに窮してしまった。流通は所有、場所、時間、価値、情報の5つの隔たりをつなぐ役割を持つ。これらの隔たりに対し、「商流」、「物流」、「情報流」の3つの機能から生活に貢献してきた。この3つの流通機能を集約する場が「売り場」ある。オムニチャネルの時代は、必ずしも流通の終着点ではなくなった。しどろもどろの回答になった。
▼生活者は「売場」を介さずに情報収集や商品購入が可能になり、売場機能が他に代替されるようになった。つまり、従来の「売場」は選択肢の一つになり、カスタマージャーニー視点での新たな戦略が求められるようになったのである。従って「売場」の定義も変わらざるを得ないはずだ。単なる商品の展示・販売の場ではなく、生活者との様々な接点として機能することが求められる。従来以上に高い付加価値が求められている。流通の終着点から出発点としての役割も生まれたのだ。
これまで語られていた「売場の定義」も、実は思い込みが多いと言われる時代になった。
2024/05/05