1929年の大不況期の時、米国の多くの人は食べるものにさえ事欠いていた。この時の雰囲気を伝える貴重な証言ともいえる『Only Yesterday』、副題に「1920年代・アメリカ」とある図書がある、ちくま文庫で30年も前の出版されたもので、帯には「ほんの昨日にすぎない。黄金の20年代から現代が始まった」とある。1929年の暗黒の木曜日を迎え、「食べるものがなくて、リンゴをかじっていた人々が街頭に溢れていた」と書かれている。
▼ある日突然の株価の暴落で始まった大恐慌であったが、その翌年にマイケル・カレンが「スーパーマーケット(SM)」を開業したと教えられて来た。「多くの人がそれを信じているが、本当にそうか」と島田研究室の島田陽介氏は「5月の提言」に綴っていた。SMを始めたというのは、後付けの理屈ではないかというのだ。島田氏は、「不況期に売れるものだけ集めて売ったにすぎず、後で誰かがそれをSMと、もっともらしく呼んだのではないか」というのだ。
▼そして、当時存在していた「部門・品種」を限定し、品目を揃えた「業種」店が、このSMの出現と成功の結果、「業態」は是であり、「業種」は否であるという偏見を生むことになったとある。「業種」のメリットは、商品の履歴・製造加工方法・卸過程などに詳しくなれる、ということである。そして仕入れ先・製造加工先の情報にも詳しくなるし、何よりその品種を買いに来るお客のニーズにも詳しくなることが出来ることにある。これらに関しては、「業態」にとっては逆になるはずである。解決には、品種ごとに担当者を揃える事のできる規模が必須になるのだ。
▼マイケル・カレンは、「業種」店で販売数量が多く、繰り返し買われる品目だけ選び、「業種」「品種」の境界を無視して扱うことだったのだろう。結果、ほとんどは「食品」になり、食品の品種を横断的に扱う「業態」が生まれたもの島田氏は憶測している。カレンは、最初に「業態」という概念があって始めたのではなく、「売れるモノだけ・売ろう」と考えて、商品を集めたに過ぎない。
小売業は、たくさんモノを売るには、どうすればいいかに執着し、これまでの「常識」を無視して売上と利益に執着して考えることが、新しい商売を生むことになりそうだ。
2024/05/14
