昭和モデルからの構造転換・・・

ヤオコーの新しい「中期経営計画」が発表された。変化を捉えて自ら変化し「価値」を生み出せる企業しか勝ち残れないという危機意識をもって、新たな施策に取り組んで行くとある。何よりメインテーマが面白い。シン・ゴジラ成らぬ「シン・ヤオコー」づくり、「昭和モデルから令和モデルへの構造転換」とあった。「専業主婦・パートタイムモデルから共働き・フルタイムモデルへ」「店舗だけからサプライチェーン全体で価値を生み出すモデルへ」など5つの目標が述べられている。

▼保守的な面も多い小売業態だが、昭和モデルからの構造転換は始まっている。若い従業員確保に繫がる取組みのひとつとして、頭髪やネイル、ピアスなどの使用基準、男性のひげの基準を緩和し始めた企業は多い。「ベルク」もその一社で、現在は、レジの従業員は立って接客するものだという小売業界に長年定着していた固定観念を覆し、レジに作業用のイスを設置する取り組みを開始した。業界では、現場の人手不足でシニアや女性など多様な人材が働きやすい環境づくりが不可欠になっているのだ。

▼「すねおり店」(埼玉県鶴ケ島市)、フォルテ津田沼店(千葉県習志野市)、中之条店(群馬県中之条町)3店舗で実験しているとあるので、「すねおり店」を訪れてみた。レジの各列に黒いイスが置かれていた。訪問した時間帯では、半分くらいの担当者は使わずに立ってレジ作業をしていたが、深く腰を掛けての作業も見られた。これまでの方法を急に変えられない為か、顧客が途切れた時に、「一休み」する感じで腰かけている担当の方もいた。

▼昨年、米国流通視察の際に着想を得たという。腰かけてのチェック業務は、欧米だけでなく韓国でも増えているようだ。ベルクは生産性の高い企業で、24年2月期の従業員1人当たりの売上高は3702万円、同業他社より3割近くも高い。このイスの導入も、生産性を高める「テスト」との位置付けのようだ。競合他社の多くは「お客さまからの悪印象」を心配して簡単には導入できないと思う。しかし、短い時間の観察であったが、お客さまから否定的な感じは無いように受け止められる。これも昭和モデルからの構造転換になるのかも知れない。

2024/05/19