コーネル大学RMPジャパンの講義も、5月になるとテーマも「オペレーション」に関することになる。現場的には、鮮度(品質)、欠品(品揃え)、接客(接遇)、クリンリネス(安全)を効率的、効果的に実現するためのものになるのだが、食品スーパーを取巻く環境の変化をその背景から考えるカリキュラムになっている。生鮮3品を取巻く動向、そしてレーバースケジューリングの実際を、サミット株式会社のご協力の元に学ばせて頂いた。
▼青果物を取巻く環境に関する講義のなかで、農政の基本指針を定めた「食料・農業・農村基本法」の話があった。この基本法は「農政の憲法」とも呼び、1999年の制定以来初の改正に向けて議論が進んでいる。鮮魚、畜産に関する講義のなかでも取り上げられたのが、日本の食料自給率についてである。22年度にカロリーベースで38%にとどまり、主要7カ国(G7)の中で最も低い状況になる。とくに小麦や大豆といった穀物の低さが目立つ。
▼食料自給率については、飼料や農薬なども考慮すると9%程度しかないとの話もある。その上に異常気象に伴う不作、ロシアによるウクライナ侵攻などを受け、食料、肥料、飼料の安定確保への危機感が高まり、基本法改正と新法制定が必要と判断した。政府は増産指示や財政支援・罰則を通じて食料安全保障を確保する「食料供給困難事態対策法」と名づけた新法案を今年2月に閣議決定した。食料事情に関して、これまでのように自由に買いつけができなくなってきたということでもある。
▼新法では、政府があらかじめ重要だと位置づける食料や必要物資を指定する。世界的な不作などで指定する食料供給が大きく不足する兆候を確認した段階で、首相をトップとする本部を立ち上げ、対応するものだが、事態が深刻さを増し、最低限必要な食料の確保が困難となれば、政府がコメやサツマイモといった熱量が高い品目への生産転換を要請・指示するとある。
「地球的規模の作物不足に対し、金を出すから国内でイモでも増産しろという政策だが、現実味があるとは思われない。食料安全保障にとっての効果は、コメを輸出するぐらい作っておき、有事にはそれを国内に回すという政策ではないか。それには当面コメの生産調整を解除し、備蓄を積み増ししておいた方がよっぽど良い」との発言があった。
2024/05/21