業態動向だが、コンビニ、ドラッグに続いて百貨店業界を説明した。新入社員教育での小売業界の動向に関しての席である。百貨店業態(DP)は、コロナ禍の影響から急速な回復を続けている。22年から光明も見え始めていたが、コロナ禍の影響が甚大だった百貨店は、諺に「谷深ければ山高し」があるように急速な回復を続けている。23年の業界売上、19年の5.7兆円には及ばないものの、5.4兆円を記録した。5兆円を超えるのは、4年ぶりになる。
▼23年の百貨店好調の要因は二つである。1つは「インバウンド需要回復」の継続だ。円安による影響も大きいのだが、昨年度の免税売上高は、4282億円(前年比170%増)で過去最高を更新している。もうひとつが「富裕層向けの好調な売り上げ」になる。顧客のこだわり消費を徹底的に取りに行く、高感度で上質な消費を取りに行くことで功を上げている。また、「場所貸業化」のさらなる進展と中長期的な「まち化」戦略も動き出している。
▼反面、再編、退店も続いていることも事実だ。特にコロナ禍で体力が枯渇した企業の店舗閉鎖が続いている。渋谷の東急本店が閉店。立川高島屋の百貨店部分、タカシマヤフードメゾン新横浜店、津田沼パルコや藤丸(帯広市)、岡島百貨店(甲府市)鶴屋百貨店の水俣店(水俣市)などがそれだが、特に地方百貨店はインバウンド、富裕層の裾野が狭く厳しくなっている。山形県、徳島県に続き、島根県、岐阜県も百貨店ゼロ県となる見込みだ。
▼好調企業にあっても懸念事項もある。インバウンド需要は、継続し続けるのかということと、高度成長期から百貨店を支えた「国内の中間層」切り捨てざるを得なくなるのかということだ。ターミナル駅に旗艦店や巨艦店を設置したのは、周辺商圏の中間層を取り込むための施策だった。好調の要因の「実」だけを追求するなら都心の中心に旗艦店さえあれば問題ないことになる。店舗の好立地が変わりそうだ。電鉄系百貨店がターミナル駅から撤退し始めたのは前哨戦になのだろうか。EC事業が引き続き低水準なのも注目したいところだ。
2024/06/07