中計の目標設定時のポイント数値は・・・

中期経営計画に関する事だが、意外な事だが欧米企業の公表事例は少ないらしい。米ダウ工業株30種平均で構成する銘柄ではスリーエムとWalmartのみという。その代わりにビジョンや複数年の目標レンジを公表する企業が多いと聞く。日本においても高収益企業の代表である「信越化学工業」や「キーエンス」は、中期経営計画の策定をしていない。上場企業の30%の企業は策定していないらしい。小売業も同じ比率かも知れない。

▼不確実性の高い現在だからこそ、企業が長期的にありたい姿を公明正大に映す対話ツールとして、何が適切なのかを真剣に考え抜くためにも長期ビジョンは必要と考える。経営計画を論ずるときに感じるのは、「成功したい」「成長したい」と願う出発点は同じでも、結果的に経営規模の大小が生ずるのは、何故だろうかと思う。コーネル大学RMPジャパンに出講頂いている櫻庭先生は「長期的に経営資源を増やすことを目標に経営しているかどうかである」と話されている。

▼長期的な目標とは、売上げや利益を増やすことではなく、チェーン展開を実現するための経営資源を増やすことである。そこに重点を置いているか否かが重要になる。この目標設定の有無が結果的に規模の大小を生じさせていると言うのだ。ここでの経営資源とは、①ヒト、つまり人財・組織、②カネ、つまり資金・資産、③ノウハウ、つまりチェーン経営論を指す。こうした経営資源を蓄積することに長期的目標を置くことが重要なのだ。これら経営資源の蓄積は、3年や5年ほどの期間では達成できないからだ。

▼長期経営計画の目標は経営資源の蓄積というストックが中心である。中期経営計画の目標は、売上げや利益などのフローの変化と経営資源の有効活用が据えられるのを特徴とする。目標設定時のポイントとして基本数値を櫻庭先生は語っていた。① 総資本経常利益率は長期的に15%以上であることが不可欠であること。② 売上総利益に占める営業利益の比率を示す利潤分配率は、長期的には20%以上が必要だ。③ 自己資本比率は長期的に60%以上が必要である。④ 損益分岐点比率は長期的には80%未満にすべきである。⑤ 労働生産性は長期的には1000万円以上が安定的にチェーン展開をするためには必要である。これらの長期目標をにらんだ最初の3年間の経営の設計図を描くことができるかが、最もマネジメントの力を発揮すべき分野であると。

2024/06/21