小売と物流企業のAI活用を軸としたアライアンス形成・・・

物流の24年問題解決に向けて、新たな取り組みを始める物流企業が増えているようだ。例えば日本郵政グループは、セイノーグループと業務提携し、幹線輸送の共同運行を開始した。ヤマトホールディングスは、共同輸配送のオープンプラットフォームを提供する新会社を設立したり、日本航空と組んで貨物専用機「フレイター」の運航を開始したりするなど企業間の垣根を超えた取り組みが目立つようになっている。また、「置き配」や、「ロッカー」での受け取りを推進し、再配達削減に向けた取り組みを加速させている。

▼物流と言えば、米国小売業も新型コロナウイルスの流行による経済活動の停滞に端を発し、サプライチェーンの長期的混乱により、物流面で多くの困難に直面した。モノ不足による欠品、その反動としての商品積み増しによる過剰在庫、倉庫や運輸における労働力不足などが発生したのだ。各社は各種コストの高騰や過剰在庫の整理などに追われた。今年に入っても問題は長引き、一部企業はAIを活用したソリューションを模索している。

▼サプライチェーンをめぐる課題は、継続する人手不足の緩和と上昇を続ける物流コストの抑制、それにリアル店舗とオンラインを組み合わせた「オムニチャネル物流」への対応強化にあるという。とくに物流コストが高止まりするなか、インフレ退治のカギは物流効率化にあるという認識が、バイデン政権や小売業界で共有され、小売企業や物流企業が物流データをリアルタイムで可視化・共有できる「FLOW」というシステムが稼働した。

▼米運輸省がシステムを運用し、Walmart、Target、Home Depotなど小売大手をはじめ、Union PacificやBNSF、さらにFedExやDHLが参加して、自社の物流戦略の策定や運用に役立てている。小売大手は倉庫と店舗間の配送や、オンライン注文の宅配などにおける配送ルート最適化のためAIの活用に投資を行い、注目を集めている。期待されるのが小売と物流企業のAI活用を軸としたアライアンスの形成だ。現状では目立った動きはないようだが、経費削減とインフレ抑制を狙ったAI導入は加速の度合いを高めるはずだ。物流最適化・効率化を図るなかで、必ず横連携する動きが起きてくるものと思われる。AI活用という側面で、米国小売や物流企業の動向に学べることは多いはずだ。

2024/06/24